6月 2020.6石川詩央里
緊急事態宣言が、解除になったので、通勤電車も日に日に人数が増えている。3密を守って、皆、自粛していたのが功を奏し、東京の一日当たりの感染者数が、ひとけたまで下がった。
美容院に、ずっと行きたかったので、予約を入れたのだけれど、数日後、お店の都合でキャンセルとなった。同じ頃、感染者が再び増え、外出自粛要請が再度始まり、丁度、したい髪型も決まらず、悩んでいたので、あきらめることとした。
美容院がキャンセルだから、というわけでもないが、久しぶりに皮膚科へ行ってみた。間があいていたので、多少気まずかったけれど、皆、普通に接してくれて、薬も無事にもらい、ご機嫌で帰宅した。皮膚科では、入り口のドアと、窓が開いていて、風通しが良く、レースのカーテンが揺れていた。夜は友人たちとラインで盛り上がり、届いた同人誌を、送る約束をした。久しぶりに、気分良く一日が過ごせた。
土曜はいつもの半ドンだった。最近また、院長の揺さぶりでプレッシャーをかけられ、また、落ち着かない。帰宅後は、いつも通り、音楽を聴きながら、頭を空にしていた。
この6月に入ってから、何かと空回りで気分が冴えない。私の場合、ちょっとしたことで、気分の浮き沈みが激しい性質で、時に行き過ぎると、ろくなことはない。調子に乗って、何か新しいことを始めると、必ず出鼻をくじかれ、どっぷりと落ち込む。そんな性格をしているので、誤解されることも多いし、できるだけ、周囲に迷惑をかけずに、生きていきたいのだが、時として周りを巻き込むので、友人も少なく、どんなところでも、なんとなく、孤立している。
今回の、同人誌が届き、編集長にまあまあほめられて、浮かれて、友人たちに配ろうとした。ラインで、皆の最寄りの図書館を聞き、寄贈するなどと考え、劇団時代の友人や、幼なじみ、叔父、母、に連絡をすると、皆盛り上がってくれたのだけれど、いざ冷静になると、また、やってしまった、と、後悔の日々となった。
職場の患者さんにまで、配り、詳しくは伏せるが、逆に失礼になってしまったりした。
わたしは、何かを頑張って、皆に認めてもらいたい、と幼少の頃から思っていて、実力もないのに、かなり勘違いして、おっちょこちょいなことをする。身の丈に合わない夢、志、希望、だったのだなと、痛感した。
しかし、わたしは、良くも悪くも、へこたれない。何故か、余計にファイトが湧いてしまう。こうゆうとき、あーわたしは、やっぱり馬鹿なのだな、と思うのだけれど、くだらないといわれようと、無駄な努力かもしれなくても、自分がしたいと思えるものだから、できるかぎり頑張りたい。
今の私にとって、それが小説なのだ。
今日は6月21日。先週末より、関東も、長距離移動可となった。
先日は、ユニクロのマスクが買えず、ネットショップに、なかなか繋がらなかったのだけれど、50万枚が、昼の時点で売り切れていたらしい。その日は雨で、わたしはオンラインで予約だけでもと、夕食どきまで、必死にスマホを見ていた。あとで、ニュウスで、整理券を配らない店舗では、雨の中、大行列ができ、開店と同時に皆、走っているのを見た。
夏用のものではない、ということも解り、物欲が少し、おさまった。
翌日、職場の人に尋ねると、雨だから並ばなかった、とのこと。正解だ、と思った。
その日は半ドンだったので、昼は、久しぶりに東急の100円パンを買い、午後はごろごろして、夕食後に蒸しパンを作った。お菓子作りは、気分転換にとてもよい、と思う。
今朝は、父の日なので、父親にラインすると、熱は出ていない、とのこと。父は健康おたくなので、予想は着いていたのだけれど、話題は、何でもよかった。ラインとはいえ、未だに気軽に話しかけられない。昔よりは、大分丸くなったと、母は言っていたけれど、子供の頃、わたしはクソガキだったので、毎日叱られてばかりだった。地震より何より、父が怖かった。大人になって、昔のことを思い出すと、大人たちの云っていたことが、だんだんわかってきて、特に父は、いろいろ教えてくれていたんだな、とある日気づいた。他の子たちより、一緒に過ごす時間は少なかったけれど、捨てられることもなく、ここまできた。お父さん、お母さん、みんな、ありがとう。今日はそんなことを思った。わたしはまだまだです。
今週に入り、人の流れが徐々に戻るのと比例するかのように、東京の感染者数も、じわじわ増えている。マスク、といえば医療者用の通販で、マスクや除菌タオルのセールのチラシが職場に舞い込み、良いマスクを皆で注文し、届いて、少し安心できた。
街や、池上線の電車の中の人々も、マスクが足りているのか、皆、している。布マスクは、比較的少数派のように思うけれど。ネットやテレビでも、国産の手作りマスクの情報が溢れ、肌触りも良さそうな、洗濯可能なものあり、つけるとひんやりする加工がされているものありで、日本人のすごさを感じる。
職場では、消毒用のアルコールが残りわずかで、少し前までは、医師会館で配って入れていたのだけれど、通販の会社と提携したらしく、オンライン注文のみの受付となってしまった。わたしの職場では、院長がオンラインを渋っているので、アルコール配布のお知らせを、ファックスで受け取っても、指をくわえて眺めるしかない。いつも使っている卸しの人に尋ねると、一本ならありますと、しぶしぶの返事だった。恥ずかしいけれど、他の薬の納品のたびに、いちいち尋ねるしかない。
仕事は、患者さんの数が戻ってきて、忙しい中、スタッフ同士、協力し合って、感染予防の環境整備を続けている。
通勤電車の中から、窓越しに通り過ぎる白いアジサイを、眺める。全員マスクの車両では、女性たちが、目元を綺麗にメイクするようになり、換気の窓から、初夏の風が入り込む。感染者数は増え続けている中ではあるけれど、少し、穏やかな気分になっている。