光輝のアリア〜ボア

貴方が 傍にいてくれるなら
そこがきっと 約束の大地
始源に在る 浄福の楽園

一体、いつから彼女の事が好きだったのか?
初めて会った時から、と言うのも、まるっきりの嘘ではないが、本当でもないように思う。
多分、彼にとっての真実を正直に語ったら、口の悪い親友などは、大笑いしてくれる事だろう。
結局のところ、成就が決定された相手に対する彼の恋心は二転三転、自覚したその瞬間に失恋気分まで味わわせてくれるという大盤振る舞い振りだったのだから。
色硝子越しの陽光は、本来、白一色である世界を取りどりの色彩で彩る。それが華やかさではなく、高雅さをより強く感じさせるのは、その場のひんやりとした清浄な空気故であろうか。
そんな天上もかくやと思わせるような世界を後にして、彼は広間の隅に据えられた廊下へと歩を進めた。
関係者以外は立ち入る事のない石造りの廊下は、高価な色硝子をふんだんに使った、趣向を凝らしたものではない。しかし、一般的でなく高い位置に据え付けられた薔薇窓から射し込む無色の光は、周囲が暗く沈んでいる分だけ、この上なく清く、その一筋に神聖なものさえも感じさせる。
更には、上…神の御座ます天の国…へと続く世界を現す高い天井は、奏でられる音楽、そして聖職者達の説法をよく反響させる。それは、目には映らない神の権威というものを表現し、一般民衆に五感の全てで納得させるには、かなり有効な術である。そして、主なる神の絶対王権で治められる階級社会の顕現として、この国の王家が神聖にして絶対不可侵であるという幻想を心の奥底にまで植え付ける事にも。
結局のところ、人間という生き物は己を支配し、守護してくれる存在を必要としているのだ。その為の権威だ。だからこそ、神は存在する。常に人々の間に。
ほんの少しの躊躇もなく、それでいて自らの生きる世界の全てである、そんな周囲のもの共を一顧だにせぬまま、石造りの廊下を静かに歩んでいた者は、しかし、背後から響いた声に、白い法衣を翻して振り向いた。
「アストリアか」
彼が今日の聖餐に出席していたのには気づいていた。そして、聖餐の間中、祈祷そっちのけで見せていた、今まで背負っていた重荷をすっかり降ろしたような晴れ晴れとしたその表情にも。これだけでも説法の終了後、この若者が駆け寄ってくる事など、火を見るよりも明らかな事だったのだが。
「今日は、陛下主催の夜会があるのではなかったかな」
「これから行くところです。だけど、その前にボア様に御報告しなければ、と」
その言に、新たに建てられた大聖堂の主にして、国王の顧問官でもある大司教は、相好を崩す。
「婚約が正式に調ったそうだの。めでたい事だ」
「もう御存知でしたか?」
アストリアは、驚きに目を見張ったようだった。…いや、そのように見えたのならば、それは彼が本当にそのように思っているからなのだ。目の前の青年は己の感情を隠そうとしない。この聖王国の貴族社会において、他に類を見ない程。どこかしら朴訥で、周囲の優雅や洗練という皮を被った退廃に染まりきらない様は、彼に全く貴族らしさを与えていなかった。
彼の精神は健全で、若木のように真っ直ぐだ。だからこそ、実の親子以上に年の離れたこの青年をこんなにも好ましく思っているのだが。
「ボア様も夜会に出席されるのならば、彼女を紹介する事もできたのですが…」
「無茶な事を言うものではないよ」
出席者が一握りの貴族のみに限定される聖王陛下主催の夜会には、如何に陛下のお気に入りとはいえ、一介の聖職者が顔を出す事など許されない。
そんな基本的な事まで忘れ去ったかのように、本気で悔しがるアストリアの姿に、ボアは苦笑しつつも、緩やかに首を振る。
「また次の機会にな。ゆっくりお前の奥方を紹介してもらう事にしよう」
アストリアを宥める為にそうは言ったが、ボアは彼女を知っている。王女の信頼も厚い護衛官の颯爽とした立ち姿は、その有能振りを示すように一分の隙も感じさせない。一部の貴婦人達の感歎を誘うのも尤もと思われる凛々しさで、彼女は宮廷の…多分、アストリア以外の誰もが知る…隠れた有名人だったのだ。
「それでも、そんな彼女がアストリアの許婚者である、というのはあまり知られていない事実で、ボア自身も彼から相談を持ち掛けられるまでそれを知らなかったから、ひどく驚いた覚えがある。
それでも、よかったよ。何とか上手く収まったようで」
心からの安堵の篭もったボアの言に、アストリアは照れくさそうな、くすぐったそうな顔をした。
それは、両家の口約束のみに留まっていた彼等の婚約を、正式に明文化すると共に、周囲へのお披露目をしておこう、という話が持ち上がってきた事に端を発する。それ自体は別に、意外な事でも何でもない。あまりにも遅すぎた、という感すらもあったのだが、王族女性の護衛官である彼女には、結婚とは任を辞する事を意味する。そう簡単に、婚約を発表する事もできない立場であったのだし、アストリアもそれは納得済みの事だった。そもそも、結婚を急ごうという心積もりも毛頭なかった。遅かれ早かれ、彼女と結婚する、という事実は動かしようがないのだ。
彼女と結婚して、爵位を継ぎ、家を継ぎ、領地を継ぎ、領民を治めて。上手くやっていけるだろう。彼女となら。
ただ、そう言ったら、彼女は顎を引き、唇を固く引き結んで、彼を真っ正面から見つめ返した。それは幼い日から全く変わらぬ、ひどく気分を害した時に彼女が見せる表情だった。
そして、彼女は言ったのだ。
「貴方がそんなつもりでいるのなら、私は結婚などしない」と。
相談を持ちかけた親友は、呆れ返った様子で溜息をつくと、大仰に首を振って見せた。
「…お前ねぇ。何か期待し過ぎてるんじゃないか?所詮、家同士の結婚だろう。そんなもの、お互いにいがみ合っていたって当然なんだ。お前の場合、子供の頃からの知り合いで、別に仲も悪くないってだけでも、かなり条件がいいじゃないか。そもそも、自分が女性に好まれるような性格をしているか、よーく考えてみたらどうだ」
慰め一つ言うでもない親友の態度に、多少の不満はあったのだが、その言い分を否定する事はアストリアにはできなかった。そもそも、親友に比べたら、大多数の男性は野暮ったくて気の利かない男に堕してしまっただろうが、そんな彼と比べるまでもなく、アストリアは正真正銘の野暮ったくて気の利かない男だったし、当人にもその自覚は充分にあったのだ。
途方に暮れたアストリアは、無意識のうちに何らかの救いを求めていたらしい。その説法の間中、大聖堂の片隅に悄然として座っていた彼に大司教自らが個人的な言葉を掛けてきたのは、アストリアが聖堂の堅い椅子を暖めるようになってから、五日目の事だった。毎朝日参しているのに、明らかにその説法を聞いていない青年の存在は、さぞかし目立っていたのだろう。今でこそ、そうも思えるのだが、にこやかな大司教に奥の間に通されて、茶を振る舞われた時には、現状把握が追いつかなくて、ひどく狼狽していた。だから、問われたままに、アストリアは己の陥っている状況を包み隠さず、話してしまったのだった。
ただそれは、彼の中できちんと整理されたものにはなっていなかった為、その時の彼女の表情や親友の忠告、そして、自分の感じた事などを思いつくままに口にしたアストリアの告白は、状況が飛んでしまったり、一部重複していたりと、多分聞き手側にとっては分かり難い支離滅裂な代物であったろうに、大司教は何も言葉を挟む事なく、ただ静かに耳を傾けていた。
そして、継ぎ足された何杯目かの茶で、長い告白に渇いた喉を潤しているアストリア…心の重荷を吐露し尽くしたその頃には、もうすっかりくつろいだ気分になっていた…に、穏やかな声音でこう言った。
「〈貧しい者は幸いである。神の国はあなた方のものなのだから〉」と。
この不思議な会談が始まってから、久し振りに聞いた大司教の声だった。アストリアが顔を上げると、老人は慈愛深い微笑を浮かべて、見つめ返している。
「〈愛は寛容であり、愛は情け深い。愛は高ぶらない。誇らない。自分の利益を求めない。そして、すべてを忍び、すべてを信じ、すべてを望み、すべてを耐える〉とも言うな。そなたは彼女と結婚するのだろう?例え男だろうと女だろうと、好いたら心で跪き、相手に請わねばならないのだよ。どうか愛して欲しいと」
愛?愛とは、何だろう。果たして自分は、彼女を愛しているのか?
嫌いな訳では、無論ない。むしろ、好きであると胸を張っていえる。
互いの両親が懇意だったせいもあり、幼い頃から共に遊んで育った。彼女は最も身近にいた異性であり、彼にとってはある意味、家族よりさえも近い場所にいた。アストリアにとって彼女は、母であり、姉であり、妹であり、親友であり、そしてその全てだった。更には近い将来、妻となる事さえも決定している。
そう。彼女と結婚するのは、幼い頃からの決定事項である。愛しているか、などというのは、全くの別問題だ。
「そうなのかね?本当に?今聞いた話の内容では、そなたは好きな女性に振られたのだとしか受け取りようがなかったのだが」
振られた?俺は、彼女に振られたのか?
半ば呆然と見つめ返すアストリアに、大司教は疲れたような溜息を洩らす。
「彼女を愛している訳でないのならば、このまま、婚約を破棄してもかまわないのではないかね?そもそも、愛情のない婚姻などというものは、貴族社会の悪しき風習に他ならないのだから」
婚約を破棄する。彼女がアストリアの許婚者ではなくなる。そうしたら、確実に彼女は他の適当な貴族の元へと嫁ぐ事になるだろう。「悪しき風習」と大司教は言うが、それは貴族社会をよりよく管理統括する政策の一環である。それ以外の婚姻など、貴族間にはあり得ない。それは、聖職者のみの抱く幻想だ。だけど。
彼女の仕事が空いた時、アストリアは度々彼女の館を訪れた。普段、くつろいでいる時の彼女は、どこか陽光を含んだ干し草の匂いがする。貴族の令嬢らしからぬ事に、彼女は自分の馬の世話は自分でするという主義を持っていて、ともすれば、厩舎に入り浸りになってしまうからだ。
その髪にくっついた藁屑。素直に感情を映す表情。男物の服を纏って、「丘を走ろう」と愛馬の上から、アストリアへと手を差し伸べた。平素から剣を握っているとはいえ、当然、男のそれとは比べるべくもないのに、馬上へと彼を一気に引き上げた、しっかりと筋肉のついた綺麗な腕。アストリアには何よりも魅力的に映る、白い歯を見せるその笑顔。
宮廷中を探したって、彼女のような女は他にいない。
本当に、間の抜けた話だった。アストリアはその時初めて、自分自身の気持ちを正面から見据えたのだった。
「…えーと。ごめん。よく判らないんだけど…」
沈黙を破った彼女の声音は、その表情が色濃く現れたものだった。
それは判らないだろう。アストリア自身、突然気づいてしまった己の感情に半ば混乱していたし、こんな時にどのような対応をすればいいのか全く知らない。兎に角、一刻も早く彼女に会わなければならないような気がして、こんな所まで来てしまったが、そもそも、自分は何をしようというのか。何を話せばいいのか。結果、本題とは全く関係ない事をうだうだと喋り、息を継ぐ間の会話…アストリアによる一方的なそれをそのように表現する事が許されるのならば…の途切れに、続く言葉を見失って。
大司教の元から辞した後、矢も楯も堪らず、パレスへと押し掛け、現在、王女護衛の任についているであろう彼女を呼び出してもらって、公私混合を何よりも嫌う彼女の仏頂面など全く見もしなかった風に、手近の空いている小部屋へと引き込んだ。その間に、当然の如く不機嫌から憤慨へと移行していた彼女の表情は、今では当惑に取って代わられている。
こんな事なら、前に親友が「女の口説き方を伝授してやる」と言ってきた時、素直に教わっておけばよかった。
「もしかして、この間の事、かな?」
前回の一件以来、彼女と顔を合わせるのはこれが初めてである。アストリアがどんなに壊滅的な話下手であっても、本当に話したい事が何処にあるのか、予想するのは容易かっただろう。
「ごめん!」
途端に彼女は、両手を合わせてぴょこんと頭を下げた。その行動の意味するところが、アストリアには理解できない。ので、続く言葉を待ってみる。
「あれは、あの場であんなに切り口上に言うべきじゃなかった。自分の意見を押し付けるばっかりで、貴方の言い分を聞こうともしないって態度だったよね。あの後、すごく反省したの。ごめんなさい。あの時はちょっと虫の居所が悪くて、貴方の悩みなんて全くなさそうな顔を見ていたら、何だかムカッと…。いえ、それはどうでもいいんだけど」
何やら、聞き捨てならない台詞を聞いたような気がする。
「だからね。もうちょっと落ち着いたら、色んな事をもう一度考え直してみなくちゃいけないかなぁ、とも思ったし」
とうとう来た。アストリアは思わずその身を固くした。続くだろう彼女の台詞が耳の奥に響いている。
『やっぱり、この婚約は破棄するべきだと思うの』
彼女の口からその言葉が語られるのを聞くのが怖くて、それでも自分から言い出す事もまたできず、何よりも、全てを待つという受け身な緊張感に耐えられない。
アストリアの中で激しく争われたこの切望の三竦みには、やはり最も能動的な感情が勝った。
婚約を破棄したいのか、はっきりと問いただす。
情けない様を見せたくない、というなけなしの矜持だけが彼を支えていたが、それでも、口からまろび出た言葉は喉につっかえたように固く、不自然だった。何て、情けない。
彼女は顔を上げ、深く落ち込むアストリアを正面から見据える。その沈黙は多分、実際にはそう長いものではなかったのだろう。しかし、アストリアにとっては永劫に近い程、重く苦しいものだった。
彼女が頷いたら、どうするのだ。素直に婚約を破棄するのか?本当に、それでいいのか?小さな矜持一つのために、何も言わずに望み通りに婚約を破棄して。彼女が他の男の元へと嫁いで。そうなったらもう二度と、アストリアへあの輝く笑顔を見せてはくれない。彼の代わりに夫となった男に、彼女は微笑み掛けるだろう。
大司教は、何と言っただろう。
『誰でも、好きになった相手には請わなくてはならない。「どうか愛して欲しい」と』
止めど無く溢れ出る何かが、胸を詰まらせる。その閉塞感にアストリアが耐えられなくなってきた頃、彼女はただ一言、
「……はあ??」
と言った。
「…一体、何の話?いつから、そういう事になった訳?」
彼女は本気で驚いているらしいが、アストリアも負けず劣らずの狼狽ぶりだった。混乱していたと言っていい。だかしかし、前回の会話から続いて導き出された推論を怖ず怖ずと口にすると、彼女はようやっと合点がいったようだ。納得の表情を浮かべたが、すぐに呆れ返った様子でアストリアへと視線を流して寄越した。
「貴方ったら、本当に私の話をちゃんと聞いてないのね」
溜息混じりに紡がれた言葉は、アストリアには思いもよらないものだった。
「私はね、『貴方の家と結婚するつもりはない』と言ったのよ。いーい?私は『貴方と』結婚するの。『貴方と』よ?!そりゃあ、家や領地や領民を守る事だって大切よ。だけどね。貴方とは本当に小さな頃からのつき合いだけど、これから先のもっと長い間も、一緒に時を重ねていきたいの。まず最初にあるのは、それなのよ。私の場合。それだって、領民への義務と同じくらい大切な事だと思う」
反応には、しばらくの間が必要だった。彼女の言葉がアストリアの中へとじわじわと浸透して、彼がその本質を芯から理解したと思えるようになるまでの間が。
彼女は、本気なのだろうか。いつもの辛口の冗談ではなく?そんなに都合のいい話があるのか?本当に??喜びよりも、いぶかしさが先に立つ。我ながら、自信のない事だと思う。それも、彼女の事に関しては特にそうなってしまうのだが。
「…甘い考えだって思う?支配階級としての自覚に欠ける、馬鹿な意見だって?」
らしくない、不安そうな顔。彼女はいつだって頭を擡げ、雄々しく胸を張って、突き進む人なのに。それも、半分口を空いたまま突っ立っている自分故なのだ。我に返ったアストリアは、猛然と首を横に振る。ちょっと頭がくらくらしたが、あからさまにほっとしたようにその表情に強さが戻ってきた彼女を目の当たりにする事によって、彼の中にも何かが巡って、ようやっとその体の支配権を取り戻したような、そんな感じがする。
ちょっとした悪戯を思いついた子供のような表情をした彼女が、小首を傾げる。
「貴方は?アストリア」
当然、返事などたった一つしか存在しない。
ああ、もう降参だ。きっと自分は、一生彼女に勝てやしない。そして、何よりもそれがちっとも悔しくない。どころか、何という充足感。この不思議さ。
彼女は満足そうに微笑う。それは長年つき合ってきたアストリアが、今まで見た中でも最大級に綺麗だったと誓って言える、そんな微笑だった。思わず見惚れたアストリアの前で小さく背伸びをした彼女の、羽のように軽く触れて離れていった唇もまた、とても柔らかく暖かだった。あまりにも自然なそれが、彼女との初めての口付けである事に思い至ったのが、パレスから帰途に着く道すがらであったというのも、我ながら間抜けな話だったと思う。
「ボア様。前に『彼女を愛しているのか』と詰問なさった事を覚えていらっしゃいますか?」
「覚えているとも。あの時、お前は『判らない』と答えたのだ。『そのような感情とは無縁な話』なのだともな」
しかし、アストリアの顔には、以前までにはなかった余裕のようなものがある。その事を見取ったボアは、鷹揚な仕草でもう一度頷くと、続けて言った。
「もう一度、訊いてもいいかね。『彼女を愛しているのか』どうかを」
ふと、アストリアが目を伏せた。
「私ももう一度、同じ答えをします。『判りません』と。俺…私は、いわゆる恋愛というものが苦手で、どのような感情をそう呼ぶのかすら、実はよく判らない。だけど、彼女は『一緒に時を重ねたい』と言ってくれたし、私もそうしたいと思っています。だからいいんです。例え、これが愛と呼ばれるものでなくても…」
宮廷の恋愛遊戯のように派手やかな舞台も、劇的な展開も、華やかな遍歴もなく。不器用な子供二人で、手を繋いで歩くが如く。
顔を上げる青年の目に、迷いはない。その事に対してボアもまた、嬉しそうに破顔した。
愛は寛容であり、愛は情け深い。愛は高ぶらない。誇らない。自分の利益を求めない。そして、すべてを忍び、すべてを信じ、すべてを望み、すべてを耐える。
人は、何かに寄らねば生きてはいけない。もし、互いが互いのそういう対象になれたのならば、それもおそらく愛なのだ。わざわざ彼に教える気は毛頭ないのだけれど。
ボアはただ、アストリアへと祝福の印を切る。これから続く長い時間、彼等がその心を忘れないよう、願いを込めて。
神の児達よ、幸福にあれ。
END・
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