蒼い鳥 +++ 序


いずれ幸せになるために
ぼくたちにはその鳥が必要なのです

メーテルリンク「青い鳥」



『引っ越し』と呼ばれる土地移動現象により、時計塔と遊園地は消えた。正確には消失した訳ではなく、移動したのだという。エリアマスターは各領土と共に移動する。時計塔の主と遊園地の主は共に引っ越したのだと。
アリスが今まで生きてきた世界の全てと秤に掛けて選んだ人はいなくなった。
アリスは未だその事実を受け入れる事ができない。今でも思う。何故、何故、何故。
何故、アリスは共に行く事ができなかったのだろう。何故、一緒に連れて行ってもらえなかったのだろう。
彼等から見れば、移動しなかった我々が引っ越した事になると、アリスを慰めてくれる者もあったが、時計塔から突然消えたのはアリスの方なのだという考えは、アリスの心を奥底から冷えさせた。置いていったのはアリスの方か。一緒に行けなかったのは、アリス自身の所為なのか。
心の何処かが欠け落ちてしまった。きっとこの空虚さはどうあっても塞がらない。
時計塔に替わって出現したクローバーの塔の当主はアリスにとって既知の人物で、彼は快くアリスの滞在を許可してくれた。時計塔が再び現れるまでいればいい、と。それがいつになるか判らないと言った同じ人のその発言は、いつまででも滞在していいという事。
だけど、アリスには理由が必要だった。この塔に、時計塔ではない塔に留まる理由。いてもいいと許される理由。
この世界に留まり続ける理由が。



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ユリアリ前提グレアリ予定。予定は未定。
馬鹿みたいに大長編予定。これは未定ではなく。








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