2000年度 阪上ゼミ報告書 (2001年1月)
趣味を通してのリハビリ
K. K. K. J.
T. M. Y. E.
はじめに
私たちが、このゼミで興味を持ったことは「リハビリ」や「趣味を通しての生きがい」です。事前に、各自インターネットから、興味を持ったホームページ(スポーツ、芸術など)を持ち寄ったところ、4人が上記のような内容をあげたことから、私たちのグループが誕上しました。“障害を持つ人が趣味によっていかに自分らしく生きていくか”ということを学びたいと思い「趣味を通してのリハビリ」というテーマに決めました。
主な活動内容は、個人的にお話を伺いたい、と思った方々にメールを送り、夏に訪問させていただけるようアポイントを取ることでした。
【Mさんに訪問を依頼したきっかけ】
Mさんには山崎がメールを送りました。Mさんはメールを送ると必ず返信してくださり、また、質問に対しても快く答えてくださいました。Mさんのメールはとてもフレンドリーで、お話も伺いやすかったので(私たちの一方的な考えかもしれませんが・・・)とてもうれしかったです。
Mさんのホームページやメールを読んで感じたことは「水泳を趣味とし、障害を苦にしないで生き生きとした生活を送っている」という姿でした。私たちは、この姿に惹かれて、訪問の依頼をお願いしました。
Mさんの紹介
〜「Mさんの部屋」のホームページを見て… 〜
【Mさんとは…】
平成3年23歳の時、仕事中の交通事故により下肢障害者になり、2年間の闘病生活を経て身体面・精神面を病院内で治療し、平成6年に完全社会復帰をされました。
障害名としては、左膝の上からの切断と離断(4級)・右足関節の著しい障害(6級)をもっています。
また、1999年暮れにはご結婚されました。
Mさんの水泳との出会いとしては、障害者になってから今まで通りの私生活を送っていたら、やはり足が不自由なため、今までの生活だと太ってしまい、肥満解消のために水泳を始められたそうです。
そして、肥満解消のために30歳から始めた水泳も上達していき、泳けることに自信をもてるようになったので、障害者の水泳クラブに入会して本格的に水泳を始められたそうです。入会後は今までと違う練習になりますますきつくなる反面、上達していくことに喜びを感じられたそうです。
ちなみに、クラブの練習を簡単に説明します。
週2回
・アップで200mから400mくらいクロール
・それから1500mを30分以内で泳ぐクロール
・100mダッシュ10本 クロール
・25mバタフライ5本
・25mバックストローク5本
・ダウン200mくらいですね
・たまにブレスト25m5本
対談記録
Q、水泳を始めたきっかけは何ですか?
A、元々スポーツは嫌いだったんだけど、障害者になり体を動かさなくなってから、運動不足で太ってしまった。だから、ダイエットのために、30歳ぐらいから始めた。
Q、どうして水泳にしたんですか?
A、水泳は、義足をはめずに全身で思い切りプレイできるし、足への負担も軽減されるし。他の運動だと義足をはめないといけないから、足をかばってしまい、全身で動けない。だから、水泳以外は考えられなかった。だけど、元々はスポーツが嫌いで、水泳に関しても全くの初心者だから、最初はとても苦労した。まず、泳ぐことを目標にしたけど、片足で泳ぐからクロールを泳ぐにしても水中の中でバランスをとるのが難しくて、クルッと回っておぼれているような状況になった。
Q、挫折はあったんですか?
A、ただ感覚的に運動をしようと思ったから、水泳を選んだわけだし、選手として大会を目指しているわけでもないから、辛いと思ったことはない。楽しいからのスタートだったから、挫折感を味わったことはなかった。それでももし、今後“辛い”と思うような場面に陥ったり、精神的にも体力的にも厳しい壁にぶつかったとしたら、そのときは泳ぐのをやめる。何も辛いときに、無理して泳ぐ必要はない。あくまで趣味でやっていることだから。のんびり休んで、また泳ぎたいと思ったときに泳ぐ。
Q、挫折はなかったみたいですが、限界はありましたか?
A、限界は今現在。1秒切れば“Japanパラリンピック”に出れるのに出れない・・・みたいな状況なんだ。どのスポーツでもそうだけど、たったの1秒を切るのが難しい。水泳を始めた当初は、ダイエットとして楽しむような気持ちで取り組んでいたけど、今は選手としての意識が強くなっている。ある程度泳げるようになって、いくつもの大会に出ていき、勝つようになると欲が出てきてその上を目指すようになるから。全日本そこそこでかまわない。プロの人たちは楽しむというよりも苦しんでいるだろう。周りからも期待されているから。俺は楽しいからやっていられる。そうでなかったら水泳をしない。そう思ってる人は多いと思うよ。
Q、泳ぐコツは?
A、はじめは、浮くところから始めた。ほとんど手で泳いでいる状態だから、足はバランスをとるだけのもの。泳ぎ方によってフォームが一つずつ違うけど、これは自然で、別に意識的に変えているわけではない。どんなスポーツもそうだが、自分なりの“技術”を身につけることが大切。クロールや背泳ぎはダイエットに効果的だけど、平泳ぎは腕に筋肉がついてしまうので、ダイエットには向いてないかも。筋肉をつけるつもりで泳いでいるわけではないからね。まあポイントとしては、正しいホームでゆっくりと長く楽に泳ぐことかな。ダイエットには週3回、ロングストロークで20分からが効果的だよ。足の動きは、推進力と舵の2つの機能にわかれるんだけど、手と足の力の入れ方は3:7の割合で。つまり、バランスをとるため、我流で自分にあった泳ぎ方によって勝手にやっていることなんだ。
Q、練習は週どれくらいやっているんですか?
A、今は週3回。大会前になると週5回になる。
Q、練習メニューは誰が作るんですか?
A、クラブの会長が決めたり、昔からあるメニューをする。
Q、クラブについて教えてください。
A、クラブ名は「名古屋障害者スイミングクラブウェーブ」
登録人数は50人だけど、実質は15人くらい。
男女比は7:3
Q、目標としている人や、参考になる人はいますか?
A、以外と、身近な人物かな。例えばクラブのコーチや、自分と似たような障害を持った先輩に教えてもらい、いいところを盗んで自分のものにしていくこと。それとか、オリンピック選手のビデオや、水泳のテレビを録画して、何度も見て研究したりする。とにかく、自分より早い人の泳ぎに関しては、学ぶべき点がいっぱいあるから参考にしてるよ。後は、人に指摘されたことを素直に受け入れて泳ぎ方を改善してる、てとこかな。
Q、障害者スポーツセンターのみなさんはフレンドリーですよね。みなさん、偏見もなく喋ってくれてうれしかったです。
A、通っていくうちに顔見知りになっていく。逆に、障害者スポーツセンターは障害者が中心だからみんな(私たち)もはいることができるけど、みんなが障害者だと見られることもある。見た目に障害がなかったら、内部障害・外部障害・聴覚障害とか、または、職員とか付き添いだと思われることも多い。
Q、プールはここだけしか来ないんですか?他のプールにも行くんですか?
A、他のプールにも行くよ。障害者プールではないところに、クラブとして団体でも行くし、個人としても行く。でも、最初は、周りの人に不思議な目で見られたりするもで、すごく嫌だったなー。
Q、今、好きなことは何ですか?
A、水泳とパソコンをなぶること。(なぶるとは、名古屋弁で「触る」「うつ」の意味)特に水泳は、圧力(プレッシャー)にかけられることもなく、自分自身で楽しんでいることだから、最高の趣味だね。パソコンに関しては、ホームページのトップページを1年で10回くらい変えてるし。YAHOOに登録することが目標だったから、今はそれが叶ってとても満足なの。
Q、水泳を始めたとき、周りからの反応はどうでしたか?
A、特に何もない。周りの反応を気にするよりも自分が楽しければよい。周りの反応を気にしているようでは何もできないから。もし何か言われたとしても、気にせず、マイペースに自分のやりたいことをやる。周囲の反応など、興味がない。
Q、水泳連盟(正式名書:日本身体障害者水泳連盟)についての詳しいお話をお聞きしたいのですが・・・?
A、競技者は登録制で年に1回の更新があります。あくまでも、登録していることが条件です。大体障害者クラブから出ることが多いが、個人で出ることも可能です。団体の場合は各クラブの会長さんがたいてい、みんなの分をまとめて登録を行います。
地域大会→日本選手権→Japanパラリンピック
(世界に通用する人は五輪へ)
*国体系: 受付は、福祉課の窓口
*センターでの大会: 障害者だったら、誰でも出場は可能です。センターの大会で優秀な成績を収めたものは地区(地域)大会に出場できます。しかし、規定が3つあります。まず第一に、地区大会では、水泳連盟に競技者登録していなければなりません。第二に、センターの大会において優勝しても、地区大会の標準記録をクリアーしていなければ出場認可はできません。最後に、これは当たり前のことですが、障害者でなければならない、ということです。その後、優秀な成績を収められたら、全国、さらにはパラリンピックと出場できます。
編集後記
こうして、Mさんとの体験を通して、たくさんの知識や新たな発見を得ることができました。それは、Mさん自身の意志や精神的な強さであり、そして、自らの障害を受けとめ、常に上を目指すプラス的な思考や障害の有無にこだわらない偏見のない心。また、自分の好きな水泳に対する熱意でした。それらをふまえて、“人は誰でも努力をすれば、そのぶんだけ報われる”ということを、実感し学んだのでした。
全体的なまとめとしては、障害を持つ当事者の方とお会いしたり、ホームページを拝見したりすることで、障害を持つ方がみなさん楽しく、強く生きている姿に感動し、また、それとともに、自分らしく生きるための、並々ならぬ努力を感じることができました。私たちは、日常生活において、可能なことでも躊躇してしまうときがあります。しかし、今回障害を持つ当事者の方々との体験を通して、みなさんの並々ならぬ努力を痛感し、今の自分を反省することができたと思います。