2000年度 阪上ゼミ報告書 (2001年1月)
O. N. K. M. K. M.
T. Y. T. Y.
自閉症の子は、1000人に1.5人くらいの割合でいると言われています。自閉症という漢字の意味からして、「自分の殻に閉じこもってしまう病気」と思う人もいるかもれません。自閉症の子の行動を見ると、いかにもそのように見えることもありますが、でも、本当は違います。自閉症の子供たちは、「外からのいろいろな情報をきちんと知る働きに障害がある」ために、まわりの状況を知り、それに対応することが、うまくできないでいるのです。いまでは、さまざまな経験や観察、そして脳に関する科学の進歩によって、自閉症について正しい理解ができるようになりました。そして、自閉症は、中枢神経の障害だということがはっきりしてきました。
私たちの体には、すみずみまで神経がはりめぐらされていて、体で感じたいろいろな情報を、たえまなく脳に送り込んでいます。脳はそれらの情報を受け取って、整理したり、判断したりして、体の各部分の筋肉に、それに適した行動をするように命令を出しています。体と脳を結ぶ神経の中で、いちばん中心になっているのが脳とせきずいの神経で、これを中枢神経といいます。自閉症の子は、目や耳の働きにはなんの障害もありません。聞こえているし、見えているのです。しかし、目や耳から入ってきたさまざまな情報を整理して、全体としてまとまった意味のあるものにする(認知する)ことが苦手なのです。見たものを脳に正しく送信しても、その情報を全体の中で整理してとらえなければ意味を持ちません。たとえば、ある場面を見ても、その中の特定のものだけが強調されて、全体がよく分からないというようなことになります。言葉もそうです。耳で音声をキャッチしても、特定の言葉だけが強調されて、話の全体がつかめないのです。外国人に英語で話かけられたとき、知っているいくつかの単語はわかっても、言っていることの全体がわからないのと同じような状態なのです。
このように、自閉症のしくみは、かなりくわしく分かってきました。原因はお母さんの御腹の中にいるときか、または生まれるときの事故などだろう、と推定されています。でも、細かい点については、まだわからない事がたくさんあります。
自閉症の子を男女の数で比べると、男子のほうが女子よりも多く、その割合は4対1です。これは世界中、どの国でもほぼ共通なので、男の子には、自閉症になりやすい何かがあるのかもしれない、という考えも生まれています。
自閉症は、育て方や環境に原因があるのではなく、生まれたときからのものですから、赤ちゃんの時からその傾向が現れているはずです。でも、それはほんのわずかなので、大抵の場合、お母さんでも気づきません。
そこで自閉症は3つの診断基準によって判断されます。
この3つの特徴は、3〜6歳頃にもっともはっきりして、年齢とともに改善していきます。しかし、多くの場合、大きくなってもまわりの人の理解と援助が必要です。
このような診断の基準がありますが、軽度の子もあり、重度の子もあるのは、他の障害と全く同じです。地的発達の面で遅れを持つ子が多いのですが、2割くらいの子供は知的な遅れがなく、高い子も1割くらいいます。また自閉症の子の2〜3割くらいにてんかんがあります。
自閉症者の学ぶ場所はさまざまで幼児の段階では、通常保育園や幼稚園、親が早くに気づいていれば障害児専用の保育施設に通ったりします。学校に通うようになると、地域の学校の障害児学級(情緒障害学級や知的障害学級)で学ぶこや、障害児のための学校、養護学校へ通ったり、通常学級から通級で、言葉ときこえの教室や情緒障害学級に通う子もいます。
また、病院や施設に入ってそこから学校に通う子や、先生に来てもらう訪問教育などの方法もあります。
自閉症の子は、友達と上手くつきあえなかったり、集団行動が苦手なため順番を待てなかったり、教室で奇声をあげたり、席につかないでふらふらしていることがよくあります。怒鳴ったり
おこったりせず、優しく話してみよう。外からの情報を受け取るのは苦手です。簡単なことばで
はっきり伝わるようにし、時には身振りや、文字、絵、写真などを使うこともよいでしょう。
「おはよう」「さようなら」のあいさつは、答えが返ってこなくてもしてください。言葉できちんと伝えなければ伝わりません。急な変化が苦手のため予定の変更は前もって丁寧に教える。
自分の思うようにならないとストレスがたまりかんしゃくをおこすことがあります。頭を壁にぶつけたり、げんこつで自分の頭をたたくなど自傷行為をおこないます。あまりにひどいときにはお医者さんと相談し心を落ち着かせる薬を使い和らげることもあります。
障害を、かかえながらも、自閉症の人たちは、それぞれの自立をめざしています。できる限り自分のことは自分でして生活を支えるために働き、そうして、社会の一員として、いきいきとした生活をしていくことを望んでいます。障害が重たくて自立の難しい子の場合でも、自分の可能性の中で、どんなささやかな仕事でもいいから、働くことの喜びを感じながら生きたいと願っているはずです。
現在、障害を持つ子供たちへの配慮は、学校など、教育の面では整って来つつありますが、学校を卒業したあと、就労しているのか、在宅しているのか、それともグループホームで生活しているのか、趣味を持ち、人生を楽しんでいるのかなど、彼らにとっての自立を考えるとき、こうした大人になった自閉症に人たちの像が見えて来づらい状況です。地域の中で、個人として尊重されながら、豊かな社会生活を送ることが望まれています。
現在の日本ではまだ、自閉症の人たちが、いつでもどこでも働けるような環境になっていないことは確かです。自閉症の人たちは特有の「こだわり」や「くせ」、「儀式」があり、また表情や態度にも硬さがあることが多く、障害への正しい認識をもたない人にとっては、理解されにくいのです。
しかし、彼らは素晴らしい能力をもっていますし、いくつかの関門さえくぐりぬければ、働き続けることができます。
たとえ障害が重たくても、できるだけ地域の中で生活していきたいという思いから、自閉症で、民間の企業に就労しない人は、地域作業所で、自分に合った仕事を、それぞれのペースで働いています。
作業所では、今なにをする時間かわかるように、スケジュール表が用意されています。何をするかについて、文字や絵で、それで理解できない人には写真で貼ってあったりします。仕事も個人別に用意されていて、スケジュール表に示された仕事を自分の机に持ってきて、できたら指定の場所に納めます。仕事は左から右へ、上から下へと同じ流れで行います。どんどん仕事をこなし、次へ次へと進みますが、イライラしてくる人にために意識的に、スケジュール表にも休みが入れてあり、大きい音や周囲の動きに敏感な人が多いので、間仕切りやついたてで居場所を区切って、余分な刺激をできるだけさけて安定して過ごせるように工夫しています。作業所での生活は、作業だけではなく、レクリエーションや社会見学など多様に行われ、地域社会に向けての様々な働きかけも行っています。
今、新しい施設の形がいろいろ考えられ、実行されています。そのひとつが少人数でグループを作る形式の、グループホームです。施設の中で、グループごとに生活する場合もあるし、街の中にアパートを借りて、5,6人の単位で職員と共に生活する場合もあります。食事は、食堂で、職員の人が作ってくれたものを、それぞれの出勤時間に合わせて、まちまちにとります。仕事から帰ると、夕食をとり、作業着の洗濯や掃除を自分でして、お風呂のは交代で入り、寝るまでの間テレビを見たり、好きなことをして過ごします。自閉症の人たちはとても几帳面なので、どの部屋もきちんと整理整頓されています。当番を決めて自分たちの部屋の管理は、自分たちで行っています。時に、カセットテープの音楽を最大音量でかけてしまったり、部屋の明かりをつけっぱなしにしてしまったりすることがあり、注意を書いて食堂に貼るなどすると、みんなすぐに守ります。一人一人が自立していきることに自覚を持っているのです。
去年の夏休みに自閉症児をもつあるご家庭に伺い、ボランティアをさせていただいた時の訪問記録です。
当日は晴天でとても暑い日でした。玄関ボタンを押すと、自閉症児のY君が元気に私達を迎え入れてくれました。
「こんにちは。」とY君に話し掛けると目は合わせてはくれませんでしたが、とてもひとなつっこい男の子だなという印象を持ちました。とても日差しが強かったのでプール好きのY君は私達が来るや否や、自分の部屋で水着に着替えてプールのある庭まで元気よく走っていきました。私達もジョウロを使ったりホースの水を使い、一緒に遊び、私たちが「バケツに積み木を入れてちょうだい」と話し掛けるとその通りにしてくれて、コミュニケーションがとれているような気がしました。顔に水がかかることが苦手らしく、少しでもかかるとすぐにタオルで顔をふいていたことを覚えています。プールで遊び終わった後、自ら、お風呂場へ行き、シャワーを浴びていました。着替えの服も自分で着替えていたことに私たちは驚きました。この行動はパターン化といっても川や、海へ行ったときには、環境が違うため必ずしもシャワーを浴びるとは限らないので現在は様々な状況に対応できるように練習しているそうです。
Y君は、きれいなブルーの海の写真を雑誌などからはさみで切ってそれをアルバムに貼っていくことが好きなので一緒に貼って遊んだり、養護学校で出された夏休みの宿題を一緒にやりました。宿題は、穴のあいた4色のビーズを板に1つずつ挿していくといったものでした。黄色エリアを始めに決めてあげると、自分でごちゃごちゃに入っているビーズの箱の中からしっかりと黄色を選び出しエリア周辺にビーズを挿すことが出来ました。切り絵は、海の写真が特に多く、ハサミを使って写真を本から切り取り、アルバムに貼っていました。絵は自分で選ぶというより指定されたものを切り取る・・といった作業でした。ハサミの使い方は養護学校で習ったそうですが、まっすぐには使えていませんでした。勉強を一緒にさせて頂いて気づいたことは、ひとつの作業に対し、長時間続けるということはなかったことです。およそ、一作業20分くらいだったと思います。ご両親としては根気強く、少しでも長く取り組むようにしていきたいと言っていました。
少しご両親とお話をした後、Y君と私たちと母親と4人で近くのスパーマーケットまで買い物に行きました。横断歩道の前まで来ると止まり、母親のOKサインがでてから横断していました。本人は信号の識別ができないので、今後、覚えさせたいと母親が言っていましたが、どのようにして教えていいのか悩んでいる様子でした。スーパーマーケットに着きY君自らカートを引いてきてくれたことには母親も驚いていました。買い物中に母親が自分の好きなパンを持ってきていいよと指示したところ、Y君は迷いながらも自分で選んでいました。最後、会計が済み袋分けもY君がすすんでお手伝いしていたことには私たちも驚きました。
あっという間に時間はすぎ、とても有意義な一日がすごせました。
「ティーチプログラム」と言って生活行動をすべて徹底し、行動パターンを覚えさせることをいいます。行動を絵にして、自分の意思を表示させたりします。この方法は、アメリカで多く取り入れられているそうです。
現在、力をいれているのが身辺整理だそうです。その他にも、お米とぎ、ごみすて、新聞取り、ご飯のセッティング、お箸の持ち方、使い方、お風呂で自分の体を洗う事、歯磨きなどだそうです。学校では、はさみを使った授業を行ったりしているそうです。
毎日生活していて一番気を使っている事は、パターン化することと、パターン化しないで覚えさせてあげることとはっきり区別してあげる事だそうです。自閉症の子は、新しい事をしたり、させようとすると頭のなかでパニックになってしまい泣き出してしまうことがあるそうです。お風呂で自分の体を洗ったり、歯を磨いたりするのはパターン化して覚えさせてあげ、散歩をするときなどには日によって変えたり工夫して、いろいろなことに対応できるように努力しているそうです。まず、自分のことができるようになってからいずれ、人の分まで出来る様になればいいなとご両親は話していました。
水泳をはじめたきっかけとしては体を強くするためにはじめたというのもあるそうなのですが、関係を持つ事は出来ないけれども、「集団意識」をもってほしいというご両親の願いからだったそうです。
急な用事や自分自身が病気で面倒が見られない時に、市のほうでボランティア登録している方に市に電話をすると派遣をしてくれるサービスがあるそうです。そして市の方からボランティアの方に1日いくらという形でお給料を払われるシステムになっていそうです。
このご家庭ではアルバイトではなくボランティアさんという形でお手伝いをしてくれる方を募集しているようです。それは以前に「アルバイト募集」というような呼びかけを行った時に、中には「お手伝いをしたい!!」と心から希望してくれる人もいたそうですがそれというより「お金になること」を目的に電話をかけてきた人が多くいたそうです。ボランティアとして募集した時に来てくれる人と、お金稼ぎのためにバイト感覚で来た人との間に意気込みや熱意の差が大きく生じてしまっていたそうです。それからは、始めはボランティアさんとしてお手伝いをしてもらって良い信頼関係が築けた状態の時に先ほどの市のボランティア登録のお話をして、登録をしてくれた方に緊急の時などにボランティアをお願いしているそうです。
その他に学校のことに関して、送り迎えをする時などに先生に対してはどうしても自分達預ける側の方が頭を下げるようなそういった関係が生まれてしまっている事に疑問を持っているそうです。学校というものは子供を預かり養育そして教育をする所であるにもかかわらずこちらの立場が自然と低くなってしまっているのはどうしてなのだろうかと。このご家庭ではお金を払っている以上学校で働いている先生方に「このぐらいやってあげているんだから」ではなく「これぐらいやって当たり前」というようにもっともっと割り切ってくれたらお互いよりよい関係が築けるのではないかと考えているそうです。
自閉症は、特に周囲の理解を必要とする障害です。霜害を克服するという意味では、何よりも多くの周囲の人々の、温かく見守る目が励ましにもなり、重要になってくると思います。私たちの無知が、当事者の方々の心情を深く傷つけてしまうことがあります。自閉症という障害が、先天性、或いは誕生後早期に何らかの原因で起こる、精神発達の機能障害であることを、私たちは敢えて自分たちの意思で確認し、正確に判断する必要があると思います。
昨年12月、1泊2日の予定で阪上ゼミ合宿が行われました。目的は、長野県在住のzさん宅を伺い高機能自閉症のYくんを訪問することです。zさん一家はお父さん、お母さん、お兄ちゃん(中学一年生)とYくんの4人家族でした。Yくんは今地元の小学校に通う元気いっぱいの少年です。
Yくんが2歳の頃、ご両親は、目線が合わないことに気づいたそうです。まだこの時点では自閉症という障害をもっているのとは分かりませんでした。5歳の時、お父さんの仕事の関係でアメリカのロスへ家族みんなで転勤することになりました。その時のYくんはまだ言葉が全くしゃべれることはできませんでした。赴任先のアメリカで、Yくんが高機能自閉症だと診断されたそうです。
現在11歳のYくんは、ある程度のコミュニケーションをとることができます。アメリカで6年近く生活して培われた英語の発音はネイティブスピーカーのようで、すばらしいの一言です。もちろん、日本語でも英語でも自由自在にご家族とコミュニケーションをとることができ、パソコンのタイプ打に関しては、かなりの早さに驚きました。
彼の今のこだわりは、学校から帰ってパソコンの前に座りポケモンや車のページをチェックすることや、「これ何色だ?」と何度も聞き、正しい答えが返ってくるまで聞き続けることなどです。また、1日の予定がきちんと決まっていないと、とても気になるので、だれかに紙に書いてもらいます。
しつけに関してお父さんは、他の子供たちと、何でも同じくできるようになってほしいのではなく、ただ、正しくないこと、人に迷惑をかけることはいけないのだとはっきり分かれば、後は、 Yくんの、人間性と個性を活かして生きていってもらいたいのだとおっしゃっていました。
お母さんのお話しを伺っている途中、何度もYくんが、「この色は何色と何色でできた色?」と、何度もくり返しお母さんに尋ねてきました。色に関しては、最近のYくんのこだわりのひとつなのだそうですが、こうした質問のやりとりをすることで、Yくんは、その場の雰囲気にはいってきたり、お母さんの外に向けられた関心を、自分に戻しているそうです。こういう時は、適当に無視したりせず、目を見て、感情をこめて答えているそうです。自閉症の子はとても他人の心や、感情の動きに敏感なので、例えばYくんも、お母さんの心の冷静さを、すぐに読みとってしまうのだと、笑いながらおっしゃっていました。
Zさんのご自宅を訪問したとき、部屋に入ると、ところどころ壁に、いくつかの小さい貼り紙が貼られているのが目につきました。その紙には一人称で、「(僕は、)・・しません。」などといったような、ちいさな決まりごとや注意書きのようなことが書いてあって、よく目につくところに貼ってあるのだと、後になって説明をいただきました。Yくんは遊びや、ルールのしくみを正しく理解することが難しいので、そうして紙に書いたり、おなじ質問や答えのやりとりをなんども繰り返すことで、その場の決まりを覚えていきます。また、Yくん自身にも声にだして復唱させ、自分自身に言い聞かすことも必要なようだそうです。
生活の中では、ほかにもいくつかの工夫や努力をしていました。例えば外出したとき、いつYくんがパニックになるかわからないので、落ち着かせるための、周りから隔絶された空間が必要になるので、常に車を横付けするなどの対策をしているそうです。また、Yくんを安心させるため一日のスケジュールをあらかじめ決めて、紙に書いて渡しているのだそうです。
ストレスを上手くコントロールするのが難しいので、家族みんなでストレス解消に取り組んでいるそうです。Yくんのストレス解消方法として5つの方法を使っています。
家族がストレスを解消する事も大切で、いかにみんなが楽しむかがポイントとなり、土・日はみんなでいろいろなところへ行くそうです。
Yくんは今、地元の小学校に通っていて、週に何度か、朝礼、朝の会、読書時間、得意科目(算数)や給食などの通常授業に参加し、あとは"心の勉強"の教室で過ごします。 給食当番や掃除当番などの準備活動にもきちんと参加します。ただし、静かにできないときは退室します。
得意なコンピュータを1日に30分ほどしたり、毎日の行動を先生にe-mYilで送ったり、運動場を5週、縄跳び100回することなどが日課です。家庭科も得意分野であるため、料理や裁縫・編み物をし、お世話になった仲間達にあげたりします。
Zさん家族が学校へ要求することは、可能なものから、授業への参加を徐々に増やしていくことや、作業・当番を決めてもらうこと。運動は、日々時間を決めて行い、宿題等に関しては他の生徒のみんなと同じものを与えてもらうなどです。静かに出来ないときには、きちんと注意をしてもらい、改善の傾向が見られない場合には退席させたり、校長室へ呼び出し、または、帰宅させてもらっています。
注意のしかたに関しては、人に迷惑をかけたり、ルールを守らないときにははっきりダメと教える。「目を見て」と目を凝視させ両手をつかみ5秒間、一人称で「僕は〜〜しません。」と発音させ反省を促し、その後は無視をします。この無視が大事なポイントになります。なぜ無視をするのか?これは、注意を長く与えすぎたり、きつすぎると、逆にそれがストレスになって反抗したり、常道行動になりやすいからだそうです。
Yくんはクラスの子と友達になりたくても、上手に自分の気持ちを表現するかとが出来ません。そこで彼のお母さんが、クラスのみんなにYくんの気持ちを代弁してくれました。
「Yくんはみんなと仲良くしたいと思っているけれど、遊び方がわからずに、追いかけてしまうことがあります。みんなが逃げればそれが楽しくなって、ひっかいたり、つねったりしてしまうのです。嬉しすぎて"ギャ〜〜ッ"叫んでしまうとことや、服を引っ張ったり、噛みついたりすることもあります。いけないことをしたらきちんと「ダメだよ」と注意して欲しいけれど、彼がそうした行動をとってしまうのは、やっぱりみんなと友達になりたいからなの」と。
クラスのみんなはYくんをどう思っていたのか、お話を聞いてどう思ったのでしょうか?
子ども達のはじめの気持ちは、"Yくんの事が少し怖い"とか、"ひっかかれたり、蹴られるのがイヤだ"とか、"いつも学校に来ているか気になる"、"あまり考えたことがない"とか、"仲良くなりたい"などでした。お話を聞いての感想は、"自閉症という病気だけど、やっぱり一緒に授業を受けたい""普段頑張ってる事もわかった""自閉症についてもっと詳しく知りたい""もっっとYくんのことを知りたい""友達になりたい"などでした。
Yくんの、先生やクラスの子とのe-mailでのやりとりを見せていただき、Yくんの楽しい気持ちや、優しい気持ちがたくさん伝わってきました。
Yくんは、ロスではUCLYの自閉症プログラムの初期段階で、6か月訓練behYviorの改善を受けたそうです。アメリカにはお母さんのためのカウンセラーをするシステムが充実しているとYくんのお母さんは力を込めていっておられました。日本はまだ、障害者のお母さんのためのカウンセラーがないことが残念なことであり、母親のセラピィストの制度の確立が少しでも早く望まれているのだと痛切にわたしたちは感じました。日本ではいまだに障害を隠していくような面が残っていますが、アメリカでは障害児を持つお母さんから育て、考え方を変えていくので、子供の障害を隠そうとしていては子供を育てていけないそうです。
帰国してからも、Yくんのご家族は何度も小学校や教育委員会、福祉センターなどに出向き、彼にとって最良の環境づくりを続けていらっしゃいます。
今回、Zさん一家と出会うことで、こんなに明るく、たくましく、障害と共に生きている家族がいるんだなぁと、「障害を抱えている家族」に対する、大変でつらそうなイメージや、自分の先入観などが大きく変わりました。家族ひとりひとりが、おおらかな目でYくんを見守り、はぐくみ合うような形で、「家族」として飛躍している様子がとても素敵で、私たち自身にも何か温かいものを教えられてる気がしました。