しっかり知りたい!

Dr.まさむねの目の教室

その1

Dr.伊達まさむね

近視は「悪い目」?「病気」?

 矯正視力は良好であっても裸眼視力(眼鏡を使用しない状態での視力)が低下するとほとんどの方は「目が悪くなった」という。この場合の「悪い」とはどういう意味でしょうか。「性格が悪い」「頭が悪い」「心臓が悪い」などなど、「悪い」は多くの意味合いで使われています。少なくとも「目が悪い」の「悪い」は、善悪の悪ではありません。おそらく多くの場合は、裸眼ではくっきりと見えないために「都合が悪い」くらいの意味でしょう。軽い近視や乱視、遠視で裸眼視力が1.0以下であるというだけで、「悪い」とか「劣っている」ということはありません。「目が悪い」という劣等感は(「悪くない」のだから)本来感じる必要のないものです。しかし、現状では「眼鏡をかけること」は「目が悪くなったために必要になること」という誤解が多いために「眼鏡をかけさせるなんてかわいそう」ということになってしまっているのだと思います。矯正視力が十分に育っている目であれば眼鏡やコンタクトレンズで矯正をしたほうが効率など多くの面などで有利であるとは思いますが、(矯正を急ぐ必要はなく)矯正したくなければしなくてもよいのです。この意味でも「単純な屈折異常(軽い近視や乱視、遠視)の矯正を目的に来院されている方」は「患っている者(患者)」ではありません。

 「軽い近視や乱視、遠視は病気ではない」ことは眼科医はよく認識しています。

小児の遠視や不同視による弱視などでは、早急な眼鏡装用が唯一最良の治療なのに、先に述べた多くの誤解が累積しているために「眼鏡はかわいそう」だから装用させたがらない場合が多いようです。眼科医の前では眼鏡をかけさせると約束してくれても(購入はしても)期待通りに装用してくれていない症例はかなりの数に登ると推測され、治療として必要な眼鏡装用便利な道具としての眼鏡があることをきちんと伝え正確に理解してもらうような啓発活動が不十分であることを残念に思っています。

適切に医療を提供するためにはまず「正しい情報を正確に伝えること」が必要です。まずは、多くの人が持ってしまっている「目が悪い」という言葉に対する誤解をなくしましょう。

弱視

実は「社会的・教育的な弱視」と「医学的・眼科的な弱視」では意味合いが違うのです。「社会的・教育的な弱視」は、原因の如何を問わず、(眼鏡やコンタクトレンズを用いて)矯正しても十分な視力が得られないものを意味しています。一方、「医学的・眼科的な弱視」は、小児期に見る訓練が十分にできなかったために、目(眼球)には異常がないのに十分な視力が得られないものを意味しています。

人間の視力は、生まれたときは0.1以下です。毎日、見る訓練を続けることで通常は3歳から5歳の間に1.0以上まで育つのです。正常に見えるためには、目(眼球)が正常なだけではなく、脳の見る機能が正常に育つことが必要です。

「医学的・眼科的な弱視」の原因は、斜視や強い遠視、時には不用意に数日間眼帯をしてしまったことなどです。斜視や強い遠視は、視力が育つために必要な「ピントのあった映像」が網膜に届いていないために生じます。視力が育つために重要な時期には、たった数日間であっても不用意に眼帯をしたりすると、そこからピタッと視力の成長が止まってしまうことがあるのです。

「医学的・眼科的な弱視」は、早期(できれば3歳、遅くても5歳まで)に発見できれば、その時点から「ピントのあった映像を網膜に届ける」ことで正常に育てることができます。(それ以降の治療は困難です。)「ピントのあった映像を網膜に届ける」ためには手術が必要なこともありますが、手術が必要であっても不要でも必ず必要な治療手段は「適正な眼鏡かけてピントのあった映像を網膜に届けること」です。さらに弱視の目の視力を集中的に使わせて育てるために、弱視ではないほうの目を一時的に塞いで使わせないようにすることもあります。

「医学的・眼科的な弱視」は早期に発見し適切に治療すれば完治します。この際に使用する眼鏡は治療として必要な眼鏡です。

残念ながら現在の医学ではまだ治すことのできない病気もありますが、十分に治せる病気は確実に治したいと思います。

白内障

 最もポピュラーな目の病気は、白内障でしょう。先進国では手術で治る病気ですが、地球規模でみると、世界の失明原因の圧倒的な1位です。実に地球上の失明の半数近くが白内障によるものです。

 国内において白内障の原因で圧倒的に多いのは「加齢によるもの」です。10代から30代でも白内障になることがありますが、こちらの原因で多いのは糖尿病とアトピー性皮膚炎です。外傷によるものもあります。

 白内障の症状は、「まぶしい」「ぼんやり見える」などの初期症状から、「明るいか暗いしかわからない」という重症のまで、さまざまです。

 最近は、病気が白内障だけであれば、ほとんど見えなかった目であっても手術によって全く正常な見え方に回復させることができます。

このため手術の時期も、患者さんが不自由・不都合を感じたときでかまいません。敢えて急いで手術をする必要もありませんし、本当に見えなくて困るようになるまで待たなければならないこともありません。

 器械や技術の進歩などもあり、依然に比べると格段に安全・確実な手術になりました。手術時間も概ね30分以内で、局所麻酔、入院の必要もなくなりました。

 しかし、決して簡単な手術ではありません。器械や技術の進歩などに加えて、十分なトレーニングを積んだ専門医が行うからこそ、上記のように患者さんにとって負担の少ないところまで進歩してきたのです。

 一方で、稀ですが、視機能を脅かすようなトラブルが生じる危険もあります。

 手術などを考えた際には、信頼のおける眼科医に相談しましょう。

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気配りのポイント

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