〜 決勝 〜

'08/05/21
ロシア モスクワ、 ルジニキ・スタジアム





マンチェスターUTD  1−1 
(PK 6-5)
チェルシー    
Cロナウド 26 ランパード 45

 07-08シーズンのファイナル、顔合わせは国内リーグでも最後まで優勝を争ったイングランド勢同士となった。
 プレミアリーグで優勝し、2冠とUCL通算3度目の制覇を狙うマンチェスターU。対するはプレミア2位、UCL初優勝を懸けてオーナーの母国ロシア・モスクワのルジニキスタジアムに乗り込んだチェルシー。

 雨上がりで肌寒いコンディション、普段は人工芝だがスロバキアから取り寄せた芝で作ったピッチの状態が気になるところ。
 マンチェはハーグリーブスを右で先発させ、意外にもパク・チソンはベンチからも外れた。チェルシーのメンバーはいつも通り。


前半


 最初のチャンスは16分のマンチェ。左サイドでボールを受けたCロナウド、対峙するエシアンをキレのあるまたぎフェイントであっさりと置き去りにして縦へ突破。ゴール前にクロスを送ったが、中とタイミングが合わず。
 そして次のチャンスで早くも得点が入る。26分、右サイドのチェルシー側ゴールライン間近からマンチェのスローイン。ここでブラウンがスコールズとの細かいパス交換によって中に抜け出すと、ファーサイドのCロナウドの頭めがけてパスを送る。これをCロナウドが正確に決めて、マンチェがリードを奪った。

 33分にチェルシーのチャンス。中盤ランパードからゴール前右寄りに入ったドログバへふわりとしたボールが入る。ドログバがこれを頭でゴール前に折り返したところ、ゴールに向かう形でカバーに入ったマンチェのDFファーディナンドの後ろからバラックが体当たりのプレッシャーをかけ、あわやオウンゴールとなりかけたが、GKファン・デル・サールがすばやく片手ではじき出し、ゴールならず。
 続くチェルシーのCKを凌いだマンチェは、ピッチ右サイドでカルバリョからルーニーがボールを奪うと、大きく左前方へ展開しカウンターへ。このボールにCロナウドが追いつき、すかさずクロス。チェルシーのテリーより前に出たテベスがゴール前でダイビングヘッドを見せたが、GKツェフがブロック。テリーが中途半端にクリアしたボールに、後ろから走りこんできたキャリックがゴール正面15m強のところからシュートを放つが、これもツェフが反応、右手1本でクリアした。
 42分、マンチェはバラックのパスを奪ったハーグリーブスがドリブルで持ち込み、さらに前方のルーニーへパス。ルーニーはマッチアップしたカルバリョの足元を狙ってゴール前にパス、そこにテベスが飛び込んだが、一歩及ばずチャンスを逃す。
 45分、チェルシーのエシアンが遠目からシュート。このボールがマンチェの選手に当たって、Pマーク付近にこぼれ出た。すかさず反応したのはランパード。GKファン・デル・サールがゆるいピッチに足を滑らせている間にシュート蹴りこみ、チェルシーがいい時間帯に同点に追いついた。
 様子見の少ない緊張感のある展開で、イエローも4枚出た前半はここで終了。


後半

 後半も前半同様の攻防から始まるが、55分を過ぎた辺りからチェルシーが押し気味の展開になる。しかし、決定的なシーンまでには至らない。
 幾度となくバイタルエリアに攻め込まれるマンチェ。最後のところで凌いでいたが、68分、ファーディナンドが足をつって倒れ込んでしまう。ここは交代をせずに済ませたが、ファーガソン監督は74分、流れを変えるためにのFWルーニーを右へ、ハーグリーブスを中盤底へスイッチさせる。
 しかし78分、ここまで精細を欠いていたチェルシーのドログバにゴール右を狙って20mのミドルシュートを撃たれ、あわやゴールというところでポストに救われた。

 たたみかけるチェルシー。80分には左のAコールが縦に抜けてゴール前に折り返し、ドログバのシュートにつなげるが枠を外した。
 後半残りわずかな時間となって、この試合初の交代をマンチェが行う。スコールズに代えてギグス。
 そして90分では決着つかず、延長に突入することとなった。


延長前半

 後半終了時のメンバーで延長開始。
 延長2分、ここでチェルシーはマルダに代えてカルーを投入。そしてその1分後にビッグチャンス。
 左のスローインからAコールがPエリア内に運び、中央バラックへマイナス気味にパス。ここでバラックはシュートと見せかけ前方ランパードにボールを渡すと、ランパードは反転からシュートを放つ。見事な展開だったが、惜しくもクロスバーに阻まれてしまった。

 そして、上空から雨が落ちてきた。
 延長8分、チェルシーはJコールに代えてアネルカをピッチに送る。
 延長10分、今度はマンチェにチャンス。チェルシー陣内左サイドでチェルシーのクリアボールをエブラがインターセプト、一気にPエリア深く持ち込むと、GKツェフまで引き出してからマイナスにパス。待ち構えていたギグスが狙いすましてシュートしたが、このボールをDFテリーが好反応し頭でクリア、決定的なピンチを救った。
 延長11分、ルーニーに代えてナニを投入したマンチェ。そのまま延長前半は終了。


延長後半

 短いインターバルのあと、最後の15分が始まった。選手を後押しすべく、サポーターの声援が大きく響く。
 この時間になっても、雨が強くなりピッチに水が溜まってきても、足をつる選手が増えても、緊迫した攻防が続く。
 しかし延長24分、チェルシーの選手が足をつったことによりチェルシー自身がボールを切った後のプレーで小競り合いが起こる。この中で、きっかけを作ったバラックとテベスにイエロー、ビディッチの顔を小突いたドログバは一発退場となってしまい、PK戦にもつれることを考慮しても、チェルシーが劣勢となった。

 ロスタイムは2分。チェルシーはここでマケレレに代えてベレッチを、マンチェはブラウンに代えてアンデルソンを入れて、PKに備えた。
 そして120分の死闘は1対1。PK戦に突入。


PK戦

 引き続き強く雨の降る中、マンチェサポーターの陣取る側で、マンチェ先行のPKが始まった。

 マンチェ1人目はテベス。GKツェフの逆を付き、まずは成功。
 チェルシー1人目はバラック。躊躇無く右サイドに蹴りこみ、見てから飛んだGKファン・デル・サールに触らせること無く、これも成功。
 1-1。

 マンチェの2人目はキャリック。キャリックのシュートもGKツェフの逆。きっちり決めた。
 チェルシー2人目のベレッチは落ち着いてGKの逆に流し込み、ゴール。
 2-2。

 マンチェ3人目、Cロナウド。バルセロナと戦った準決勝第1戦で外したPKが記憶に新しい。そしてここでは助走を一旦途中で止めるフェイントでツェフを揺さぶろうとするが、逆に自分のペースを乱した。短いステップから放たざるを得なかったシュートはコースも甘く、ツェフにも合わせられて、完璧にブロックされてしまった。
 チェルシー3人目はランパード。コースは若干甘くファン・デル・サールも片手で触れたが、雨天に効果的な勢いのあるシュートでそのままゴールネットを揺さぶった。
 ここでチェルシーが2-3と1歩リード。先行のマンチェは失敗の許されない不利な立場におかれた。

 マンチェ4人目、ハーグリーブス。彼のキックもツェフと同方向に飛んだが、プレッシャーをものともしない強烈なシュートでツェフの左手をすり抜け、ゴール。
 チェルシーの4人目、アシュリー・コール。右サイド低目を狙ったシュートにファン・デル・サールが反応、今度は両手で触れることができたが、雨のせいか止めることはできず。
 3-4。

 後のなくなったマンチェ。5人目のここで失敗すれば敗北となる。キッカーは、延長前半に投入されたナニ。
 助走は短く、コースも甘く、ツェフも両手で弾いたが、ボールはゴール内に。何とか自滅は逃れることができた。
 しかし後攻のチェルシーが優位には変わらない。既に半ば勝利を確信するチェルシーイレブン。キッカーはキャプテン、テリー。ちらりと左を見てから助走を開始、そして狙いは右サイド。ファン・デル・サールは逆に飛び、マンチェ万事休すというところだったが、テリーはシュートの際にぬかるむピッチに軸足を滑らせてしまい、なんとボールはコースを逸れてポストに弾かれてしまった。
 これで4-4のイーブンとなり、サドンデスに。こうなると、先行のマンチェがぐっと有利になった。

 マンチェの6人目は、直前に入ったアンデルソン。長い助走から強烈なシュートを中央に叩き込み、成功。
 チェルシーの6人目は、カルー。ファン・デル・サールの逆をつき、こちらも成功。
 5-5。

 マンチェ7人目、ベテランのギグス。きっちりツェフと逆方向の右隅に叩き込み、成功。
 チェルシーの7人目もベテランのアネルカ。短いステップで左を狙って蹴りこんだが、ファン・デル・サールが今度は両手できっちりとはじき出し、失敗。

 この瞬間、6-5の結果でマンチェの優勝が決まった。
 歓喜を爆発させるマンチェ。打ちひしがれるチェルシー。
 マンチェは負け無しで、バイエルン・ミュンヘンとの死闘で制した98-99シーズンに続く3度目の優勝を決めた。