〜 決勝 〜

'06/05/17
フランス パリ、 スタッド・ドゥ・フランス





バルセロナ  2−1  アーセナル
エトー 76'
ベレッチ 81'
キャンベル 37'

前半

 屈指の好カードとなった今年の決勝。高い得点力が際立つバルサと、堅守が際立つアーセナル。だが、両チームとも基本に忠実なパスやドリブルで美しいフットボールを見せることでは共通している。そして、ゲームはお互いがペースをつかむべく、ボールが小気味よく動く展開で進む。

 最初のチャンスはアーセナルに訪れる。3分、右サイドのエブエがゴール前にボールを送ると、DFマルケスの後ろからアンリが飛び出しワンタッチでDFラインを抜け、そのままシュート。決定的なシーンだったが、GKバルデスが足に当ててどうにかCKに逃れた。さらに、アンリは続く左CKでショートコーナーを選択。リターンを受けると、Pエリアのわずか外からデコをかわして強烈なシュートを放つ。ここも、バルデスが横っ飛びでブロック、ゴールを守った。
 逆にバルサは7分、大きな展開から左にひらいたエトーにボールが渡ると、ゴール前に鋭いクロス。ボールはロナウジーニョに届いたが、アーセナル守備陣の早いチェックにチャンスを生かせず。8分、右サイドでアーセナルのDF、アシュレイ・コールからボールを奪ったジュリ。そのまま持ち込み強烈なシュートを放つ。バルサのファーストシュートは、GKレーマンの正面だった。

 18分、この試合を大きく左右するシーンが訪れる。センターサークル付近でエトーからロナウジーニョがボールを受けると、ドリブルで少し溜めてから、再びエトーにスルーパス。あっという間に、GKと1対1のビッグチャンスを作り出した。ここで、UCL10試合無得点を続けていたGKレーマンが猛ダッシュ。エトーはPエリアの手前でレーマンをかわすが、レーマンに手をかけられて倒されてしまった。こぼれたボールは、詰めていたジュリがゴールに流し込み、バルサが先制。
 …のはずだったが、なぜか主審はアドバンテージを認めずFKを指示。そして、レーマンは一発退場。バルサは先制点を逃し、アーセナルはアドバンテージが認められていればレーマンはイエローだった可能性が高かったが、結果的に残り70分以上を10人で戦うことになり、せっかくの好カードに水をさすこととなった。

 28分のバルサ、ピッチ中央でロナウジーニョがボールを持つと、DFトゥレのマークを簡単に外して、右サイドのジュリへスルーパス。しかしアーセナルのDFは集中しており、ここはアシュレイ・コールがきっちりクリアした。
37分にはアーセナルが反撃。右サイドをエブエが持ち上がると、DFプジョルを股抜きでかわしてPエリア内に入ろうとしたところでファールを受け、FKのチャンスが訪れる。キッカーのアンリがゴール前に蹴りこんだボールに、ゴール正面フリーとなっていたキャンベルがヘディングシュートをゴール突き刺し、1人少ないアーセナルが先制。俄然ゲームが面白くなった。
 人数で優位に立ちながらも追う立場となったバルサは前半ロスタイム、ロナウジーニョが止まった状態からPエリア内でキャンベルを背負ったエトーにパスを通す。エトーはワンタッチで素早く体を反転させてキャンベルをかわすと、そのままシュート。しかしここは交代で入ったGKアルムニアがよく反応し右手で触ると、ボールはポストに当たって弾き出され、同点には至らなかった。

後半

 ハーフタイムに入ると、強めの雨が降り出した。バルサはエヂミウソンに代えて、イニエスタを投入し攻撃色を強くする。アーセナルは引き続きディフェンスに集中し、アンリを中心とした反撃でチャンスをうかがう展開となった。

 51分、ボールを奪われたアンリがよく追いかけ、ファン・ボメルに対し後ろからスライディングでボールを奪い返したが、ファール。やや厳しい判定により、イエローを受ける。
 53分、イニエスタが持ち込みシュートを放つが、GKアルムニアが反応してセーブ。
 54分、ロナウジーニョが中盤でパスを受けると、厳しいチェックを受けながらもドリブルでぐいぐい持ち込む。たまらずエブエがファール。57分にも左にひらいたロナウジーニョにボールが出ると、エブエをかわし、エンドライン近くまで深くえぐってクロス。だが、GKアルムニアが手を伸ばしてこれを阻止、ゴール前にこぼれたボールもアーセナルがクリアした。バルサのチャンスが続く。61分には中盤のファン・ボメルに代えて、今期限りで移籍が決まっているFWラーションが投入された。

 アーセナルは66分、得意の左サイドでボールを受けたアンリ。スライディングでボールを奪いに来たプジョルに対し、ボールをラインに沿って大きく蹴りだし、このチェックを回避。アンリがボールに追いついたところに今度はマルケスが滑り込んできたが、軽くボールを浮かせてあっさりとかわし、Pエリア内へ突入する。しかしややボールが長くなり、GKバルデスに取られてしまった。
 67分、バルサDF・オレゲールのトラップミスを見逃さず、リュングベリがインターセプト。そのままPエリアに持ち込みシュートを放つが、GKにクリアされた。
 70分、フレブからスルーパスを受けたアンリ、マルケスに体を合わせられながらもシュートに持ち込む。しかしさすがに疲れたか、ボールはGK正面。アンリは74分にCKを得た際、バルサの選手交代が行なわれている間、しゃがみこんで休息を取るほど消耗していた。
 そして、バルサがUCLで多くの得点をたたき出してきた終盤に入り、ついに均衡が崩れた。76分、イニエスタがトップで張っていたラーションへパスを送ると、ラーションはこれを裏へ抜けようとしていたエトーに軽く流す。オフサイドライン際どいところを抜けたエトーはPエリア内でボールを受けると、左サイドから狭いところにシュートを蹴りこみ、ようやくバルサが同点に追いついた。

アーセナルはそれでも懸命にプレーを続けるが、勢いはバルサに。80分、右サイドのベレッチが、前方のラーションへパスを送る。ベレッチはそのままPエリア内へ走りこんでラーションのリターンを受け取ると、角度のないところから強烈なシュートを放つ。これが、GKアルムニアの足に当たってゴールが決まり、バルサが逆転に成功した。激しい雨の降る中、シュートを決めたベレッチ元にバルサの選手が集まり、まるで試合に勝ったかのように歓喜を爆発させる。
 残り10分少々、こうなると、時間を使うバルサに対し、既にスタミナが落ちてきていたアーセナルには成すすべ無し。このままホイッスルを迎え、バルサがビッグイヤーを手にし、アーセナルは初優勝の栄冠を手に入れることはできなかった。

試合終了とともに雨は上がり、表彰式の合間に審判に対して激しいブーイングが起こったことが、印象的だった。