〜 決勝 〜

'05/05/25
トルコ・イスタンブール アタチュルク・オリンピック





ACミラン  3−3 
(延長) 0−0
(PK) 2−3
リヴァプール
マルディーニ 1'
クレスポ 39' 44'
ジェラード 54'
スミチェル 56'
シャビ・アロンソ 60'

前半

 この日の決勝は、チャンピオンズカップ時代から数えて50回目の節目となるにふさわしいスペクタクルなゲームとなった。ミラン対リヴァプールの顔合わせは、UEFAの大会では意外にも初めて。ミランは最近の4回の優勝にゲンのある白のユニを選択、FWはシェフチェンコとクレスポのコンビ。リヴァプールも最近4回優勝しているホームユニの赤ということになり、攻撃陣はミラン・バロシュの少し後ろにキューウェルという布陣でゲームスタート。

 そしてなんと、落ち着く間もなくゲームは開始早々に動く。わずか1分、ミランが右サイドでFKを得ると、ピルロがゴール前に放り込んだボールがフリーのマルディーニへ。マルディーニがボレーで蹴りこんだボールはあっさりとゴールに飛び込み、UCL決勝史上最速ゴールでミランが先制した。
 リヴァプールも4分に反撃。右CKのチャンスに、ゴール正面ミドルレンジからリーセがダイレクトボレー。これは壁に阻まれたが、再びリヴァプールがボールを拾うと右のジェラードからのクロスにヒービアがヘッド。鋭いシュートだったが、GKヂダが正面でキャッチした。6分、ミランのシェフチェンコが右サイドからオフサイドラインをくぐって一気に抜け出す。そのまま深くえぐってから切り替えしてPエリア内に飛び込もうとしたところ、後方から猛ダッシュで追いついたヒービアがナイススライディング、ボールをクリアされてしまった。
 11分、リヴァプールのバロシュがミランPエリア内でボールを受けるが、ミランの執拗なディフェンスの前にシュートを放つことができず。対するミランは14分に右CKのチャンス。ニアサイドのクレスポがヘディングシュートをゴールに流し込もうとしたが、ゴールの中で守っていたルイス・ガルシアがこれをクリアした。
 リヴァプールはキューウェルがスタムのチャージで負傷し、23分にスミチェルと交代。

 29分、ミランはインターセプトからカカがプレッシャーを受けずに自陣より一気に前線へドリブルで持ち込む。左にはシェフチェンコ、右にはクレスポという状況で、後ろからジェラードにチャージを受け、こぼれたボールが左のシェフチェンコにつながる。抜け出したシェフチェンコは落ち着いてボールをゴール右に流し込んだが、オフサイドと判定された。32分、シェフチェンコが後方からのロングボールに反応、Pエリア内でボールを受けたが、ぴたりと背後に付いたトラオーレの守りにシュートを阻まれた。
 36分、リヴァプールはジェラードが右サイド後方から大きなサイドチェンジで左のリーセへパスを送る。リーセが頭でゴール前に折り返すと、このボールをさらにバロシュが頭で背後につなぐ。最後にガルシアがボレーでゴールを狙ったが、シュートはミートせず枠を外した。
 39分、そのガルシアがドリブルでPエリア内に入ったところで、スライディングで倒れこんだネスタに身体でボールを止められてしまう。このプレーにハンドをアピールしたが、認められず。逆にミランの逆襲。カカから右のシェフチェンコにちょこんと浮かせたパスが通り、シェフチェンコがゴール前に折り返す。このボールをクレスポが正面から押し込んで、速攻からミランに2点目が入った。

 盛り上がるサポーターの後押しもあり、ミランの勢いは止まらない。44分、中盤のカカから絶妙なスルーが前線のクレスポめがけて放り込まれる。必死にクリアを狙ったキャラガーの足先をすり抜けたボールにクレスポが追いつくと、飛び出してきたGKデュデクを見切り、ダイレクトでチップシュート。そのままボールはゴールの中へ転がり込んで、ミランが3点と大きなリードを奪って前半を終えた。

後半

 リヴァプールはフィナンに代えてハマンを投入し、後半スタート。50分、リヴァプールのシャビ・アロンソが強烈なミドルシュートを放つも、わずかにゴールの左。51分、リヴァプールのミスからボールを奪ったカカがドリブル突破を図って倒され、ゴール正面20M少々の位置でFK。少しボールを動かしたところからシェフチェンコが強烈なシュートを叩き込んだが、ここはGKデュデクがきっちりと反応、クリアした。

 54分、リヴァプールは左に開いたリーセがゴール前にセンタリングを放り込むと、フリーのジェラードがゴール正面少し遠い位置からヘディングシュート。これがゴール右上に飛び込んで、リヴァプールが1点返した。

 さらにその2分後、勢いに乗ったリヴァプールはスミチェルが25M弱のミドルシュートをゴール左隅に放つ。GKヂダも横っ飛びで反応したが、ボールは伸ばした手を弾いてゴールに飛び込み、なんとリヴァプールが2分間で点差を1に縮め、俄然ゲームは分からなくなった。スタジアムの雰囲気も、前半圧倒していたミランサポーターの声援が、後半はリヴァプールサポーターの声の前にかき消されていた。

 そしてついに59分、バロシュのポストプレーから出たPエリア内のボールをジェラード追ったところ、後ろからガットゥーゾにファールを受け、リヴァプールがPKを得た。このチャンスに、シャビ・アロンソのPKは一度GKヂダに止められてしまうが、こぼれたボールを再びシャビが叩き込み、同点。残り時間30分で振り出しに戻り、予想通り見応えのあるゲームとなってきた。

 63分、リーセが左45度の位置から強烈なミドルシュートを放ったが、GKヂダがクリア。70分のミラン、左に開いたカカのクロスにGKデュデクがハンブル。ゴール前のシェフチェンコがシュートを狙ったが、トラオーレがこれをかき出しゴールを守る。79分、左後方のジェラードからのロングボールがDFスタムを超えたところ、ガルシアがPエリア内で受けてリヴァプールにチャンスが来たが、ガルシアのトラップは大きくシュートならず。直後にミランの逆襲。シェフチェンコが中央のドリブルから右のクレスポにボールを通すと、クレスポは再びゴール前へ折り返す。ここにカカが詰めていたが、キャラガーがスライディングでシュートを阻止した。
 リヴァプールは3人目の交代選手として85分、シセをバロシュに代えて投入。ここまで交代のなかったミランも、トマソンとセルジーニョをクレスポとシードルフに代えてきた。残り5分、1点勝負となってきたことで両チームともボール回しが慎重になってきた。ロスタイム、ミランは中盤のピルロから右のカフーへ絶妙な浮き球が通ったが、ゴール前に折り返したボールはリヴァプールDFにクリアされ、ここで前後半終了のホイッスルが鳴った。3-3のまま、延長戦に突入。

延長前半

延長1分、ミランは左のカカからゴール前のトマソンにセンタリングを放り込まれたが、飛び込んだトマソンは一歩届かず。その後は少しこう着状態。さすがに疲れからか、スピードやキレ、精度が落ちてきた。11分、セルジーニョが左後方からゴール前に蹴りこんだボールがトマソンに通ったが、シュートはミートせずチャンスを逃す。延長前半終盤にはスミチェルが足をつり、ピッチの外へ。ガルシアの足もつりかかっていた。最後にシェフチェンコが苦しい体制からシュートを狙うもGKデュデクがキャッチし、延長前半も終了。

延長後半

 最後の15分。19分、左サイドでボールを受けたセルジーニョが早いクロスを送るが、誰も触れず。クリアしようと足を伸ばしたキャラガーが足をつる。ミランはのこり9分というところで、ガットゥーゾに代えてルイ・コスタを投入した。
 ミランは25分、ピルロが突破を狙ったところでハマンのファールを受け、Pエリアわずか左外という絶好の位置でセットプレーのチャンスを得た。しかし放り込んだボールはディフェンスにクリアされた。28分、延長戦最大のチャンスがミランに訪れる。左のセルジーニョからのセンタリングをシェフチェンコがゴール正面でヘディング。完璧なシュートで決まったかに見えたが、GKデュデクがこれをブロック、弾かれたボールをさらにシェフチェンコが超至近距離でボレーを放ったが、デュデクに当ててしまいゴールを奪うことができなかった。
 ロスタイム、リヴァプールはゴール正面やや右、25Mほどの位置でFKのチャンスを得たが、シュートは阻まれ、ついに120分が終了した。

PK戦

 PKはミランサポーターが陣取る方のゴールで行われる。

 ミラン1人目、セルジーニョは左足で左上に大きく外してしまい、失敗。
 リヴァプール1人目はハマン。少しタイミングをずらしたステップで、右足から蹴りこまれたボールはゴール右に飛び込み、成功。0-1。

 ミラン2人目はピルロ。GKデュデクの細かい動きに惑わされたか、右足で右サイドを狙ったボールはデュデクに止められてしまった。
 リヴァプール2人目のシセは早い助走からゴール右にシュートを放ち、GKヂダの逆を突く形でゴール。0-2。

 ミラン3人目、トマソン。デュデクの反応とは逆の左にボールを蹴りこみ、成功
 リヴァプール3人目はリーセ。左足でゴール左下隅を狙いにいったが、ややスピードが遅くヂダのファインセーブに止められてしまった。1-2。

 ミラン4人目、カカ。GKデュデクの腰をクネクネする怪しげな動きを意に介さず、ゴール左中断にボールを叩き込んだ。2-2。
 リヴァプール4人目、スミチェル。ヂダの逆を突いてゴール右にきっちり決め、2-3。

 ここまでリヴァプールが1つリード。最後となるか、ミラン5人目はシェフチェンコ。ゆっくりとした助走からゆっくりとしたボールを真ん中に蹴りこむが、体が流れながらもデュデクがワンハンドを残してブロックし、シェフチェンコ失敗。


 この結果、PKスコア2-3でリヴァプールが21年ぶり通算5度目のタイトル、ビッグイヤーを手にした。立ち上がり1分に失点、前半で3失点という致命的なビハインドをものともせず、後半に追いつき、延長を耐えてPK戦まで持ち込み、勝利を勝ち取った。イスタンブールのスタジアムには、「You'll Never Walk Alone」の大合唱がいつまでも響いていた。