心の内なる秘密の音楽 3/3





この世界には、変わらぬものなどどこにもない。時は移ろい、物事を動かしていく。
例え、それを全く望まぬ者がいようとも。



遅くにあった講義…今度はカズンズ宙尉だった…も終わり、彼等士官候補生の一日の業務も終わる。後は、彼等の居住区に戻って、少しの間、時間が持てる。一日で、最も穏やかな気分になる時。
緊張感もすっかりほぐれていたせいだろうか、教室である資材室から出る間際、講義のための資料を抱えたニックの手から、チップがひとつ転がり落ちた。慌てて身を屈めるより一瞬早く、アレクセイがそれを拾い上げる。すぐさま手の中に落とし込まれたそれを大切そうに握りしめ、「ありがとう…」と口の中で呟いたニックに、アレクセイは明るい微笑を返す。
「ブック・チップですか?」
「ああ」
少し、彼の手元を覗き込むような所作を見せたアレクセイに、ニックも心持ちホロを傾けてみせる。海と空。そして、星。生活する場としての移民星系でも、航天の中継基地としてのステーションでもない、天に散りばめられた無数の光。何世紀も前から彼等の地球(ホーム)が見てきた情景。
「綺麗ですね」
「…マルストロム宙尉にお借りしたんだ」
照れくさそうに、ニックは言葉を付加した。およそ、らしくない物を見ている、という自覚はあったので。
「宙尉は、こういったご趣味をお持ちなんですか」
「他にも、色々な本を読んでいらっしゃる。とても知識の深い方だから」
その時だった。同じ部屋にいて、今まで全く彼等の存在を無視していた人物が、口を開いたのは。
「今度の試験に出るような知識も、教えて下さる、か?」
ニックは、ゆっくりと視線を巡らす。そこには、彼等を見下す一対の眼差し。彼等よりも2、3才上なだけで、既に少年期から脱して久しいといった印象を与える、がっしりとした黒髪の男。
「…ヴァクス。何が言いたい」
「別に。言葉通りの意味さ」
彼が嗤う。いつものように。ニックは目を眇めた。ここは、何も聞かなかったかのような顔をして、話題を断ち切るところだ。常ならば。
「すまないな、アレクセイ。先に戻ってくれないか」
ニックは、呟くように言った。その場の空気を溶かさないような静けさをもって。凍り付いた空間を乱す事を畏れるかのように、アレクセイは息をも殺して、後退る。彼の退室した証拠でもある、空気の抜けたような軽い音。扉の閉まるその音が、ヴァクスとの対峙の始まりのゴングでもあった。
ニックは、彼に対して、真っ直ぐに体を向けた。ヴァクスもまた、こちらを見ている。少し眉が上がっているのは、常にないニックの行動に驚いているからだろうか。
「マルストロム宙尉は高潔な人だ。不正な事は決してしない」
無感情に事実のみを告げる言に返ってきたのは、鼻を鳴らす音。ニックは、下唇を軽く噛んだ。彼の目に触れないところで拳を握り混むと、更に続ける。
「お前が何をどう思おうと構わない。しかし、宙尉まで侮辱するような発言は許さない」
彼は、自分が何を言っているのか、判っているのだろうか。上位者に対する非難を公然と行うという、その意味を?
ヴァクスの表情が一瞬、歪んだ。虚をつかれて、ニックは小さく息を飲む。馬鹿な連想。泣き出す前の子供のよう、だなんて。
しかし、それはニックの反応を一瞬遅らせた。ヴァクスが手を振りかぶったのを確認してから、反射的にバックステップでそれを避けるのに必要な一瞬は、それだけで潰えてしまった。襲ってきた衝撃。痺れによる意識の空白。遅れてやってきた、燃えるような痛み。熱く火照った耳の奥で、どくどくと血の流れる音がする。
横殴りに耳元を打たれて、受け身も何も取れないままに、床へとぶっ倒れたのだという事を理解するまでに、少々の間が必要だった。
ヴァクスがのし掛かってきた。ニックは身を横倒しにして、己の動きを止められないよう、彼の上になるように転がる。その間、幾度かパンチが降ってきた。己も、幾度か返戻した。自分でも何がなにやら、判らない。まるで、子供のつかみ合いだった。
互いに相手の動きを封じ込めようという諍いは、結局、ヴァクスの方に軍配が上がった。ヴァクスの手が、万力のようにニックの手首をひとまとめにして、彼の頭上に釘付けにしてしまった。足を振り上げてはね除けようとしたが、その隙間もないほどに下半身は密着している。上にのしかかられた現在の状態では、ヴァクスの方が断然有利である。何とかこの状況を打破しなくてはならない、と、ニックは上半身を反らせて藻掻いたが、ヴァクスはその抵抗をねじ伏せるように、上体にも体を重ね合わせてきた。
その額を捉えた掌が、強い力で床に押しつけられる。自然、喉が上がり、圧迫された肺と気道はニックに苦しげな息を洩れさせた。しかし、このまま負ける訳にはいかない。決して。
再度藻掻く力を振り絞るために大きく息を吸う。その口が何かで塞がれたのは、すぐの事だった。ニックの両手と額を固定するのに、ヴァクスの手はどちらも塞がっている。ならば、一体?
ぬるりとした物が口腔内に侵入してきた時、混乱に駆られた疑問は氷解した。途端に、湧き起こる憤怒。現在、示せる唯一の拒絶である罵りの言葉さえも、絡め取られ、奪われる屈辱。そんな感情の噴出である小さな痙攣は、重ねられた唇を通して、ヴァクスにも伝えられているだろう。そんな事は許せない。どんな小さな優越も、彼に与えたくなどなかった。
「っ!!」
その瞬間、ヴァクスの体が浮いた。逃さず、互いの体の間に生じた隙間に足を割り込ませて、蹴り上げると同時に、その反動を利用して自身はそれとは反対方向へと転がった。素早く膝をつき、すぐにも立ち上がれる状態を整えて、床に体を投げ出したヴァクスから目を離さぬまま、唇に残る湿った感触を手の甲で拭う。その口の中に広がる、自身のものではない血の味が、己がヴァクスに与えた報復の証だった。
ヴァクスの腕がゆっくりと上がった。びくりと身構える。しかし、その腕はまっすぐ彼自身の顔を覆う。それで、彼の表情は、ニックには全く見えなくなった。ヴァクスはそのまま、動く気配を見せない。それは、おかしな話だった。彼に大したダメージを与えていない事は、ニック自身、何よりもよく知っている。
気を抜かぬまま、そろそろとその場で立ち上がる。燃えるような憤怒も興奮も、まだ身の内に激しく渦巻いてはいたけれども、軍人としての精神修養の賜だろうか、もう先程までのように、目の前が真っ赤に染まるほど、という訳ではない。ヴァクスに何か言ってやりたくて、それでも、何を言っても情けない事になってしまいそうな現実の前に、ニックはきつく唇を噛み締める。
結局、歩調を乱さずにその場を退出するのが精一杯だった。昔ながらの手開きの扉だったら、きっと叩き壊しそうな勢いで閉めた事だろう。そして、その行為は、さだめし己の悔しさの程を滲ませてしまった事だったろう、と、現在の全自動開閉式の扉に感謝しつつ。



「どうかしたのか?」
ニックは、微苦笑した。
一対一の殴り合いの場で、外見につく所にはその痕跡を残さない事は、いわゆるマナーの一つであって、それは一度でも士官学校に席を置いた者であれば、例え子供であっても知っている。流石にヴァクスも心得たもので、先程の彼との諍いの跡は、鏡で確認する限りは、唇の端にできた小さな切り傷程度のものであった。
「…何でもないんです」
腹に受けたパンチが効いてくるのも、おそらく翌朝くらいからだろう。出来うる限り、服装も平時と変わらぬように整えた。それでも、判ってしまうものなのだろうか。
途端に恥ずかしくて、マルストロムの顔を見る事もできなくなった。
「こんな夜中にすみません。ただ、少し顔を見たくなって。…もう帰ります」
俯いたままニックは、ただ、早口にそう告げる。そんな彼の頭上から、静かで暖かい友人の声が降ってきた。
「何だか眠れなくてね。いっそのこと、本でも読みながら眠気が来るのを待とうと思っていたんだが、ちょうどよかった。君さえよければ、しばらくの間、話し相手になってくれないか」



素直に入室したはいいものの、ベッドの端に腰掛け、背を丸めたままだったニックに、彼はおもむろに手を伸ばした。ニックは、思わず身を引いた。その指先が、唇に触れる。ただ、それだけの事なのにどきりとして。
「…唇が腫れている」
「少し、切りました。不注意で」
マルストロムは、それには何も言わなかった。ただ、小さく首を振り、あるかなしかの溜息をついた。
「……相手は、ヴァクス=ホルサーなのかな」
途端に、ニックの頬が紅潮する。最先任としての任を果たしきれない自分は、マルストロムの目には、さぞや頼りなく映っているだろう事が、よく解るから。
歯と歯がぶつかり合って、かちりとなった。状況を理解できないままに縮こまった舌を探り当てた彼の舌先。
今でもまざまざとこの口唇に残る、ヴァクスに与えられた屈辱の記憶。
悔しくて、腹立たしかった。なによりも、ヴァクス一人を御しきれない自分の力のなさが。
実際にヴァクスと対峙していた時には、きりきりと張りつめていたものが、マルストロムの穏やかな心配顔を前に、ふと途切れそうになる。同時に、己の意志に反して熱くなってきた目に、ニックは慌てて俯いた。唇を噛みしめ、深く静かな呼吸で、平常心を取り戻そうとする。
彼に泣きつくようなまねをしたら、二度とこの部屋には来られないだろう。何よりも、自分で自分が許せないから。
「…もう…帰ります。突然お邪魔して、申し訳ありませんでした」
何とか、普通に微笑むことができたと思う。少し、唇が震えてしまったけれど。
立ち上がりかけた腕が強く引かれる。何が起こったのかよく分からないまま、ニックはベッドに転がっていた。反射的に身を起こそうとしたが、真上に出現したマルストロムの体に阻まれる。
引き止められ、更に逃げ出せないように囲い込まれた、という認識は、少し遅れてついてきた。
「私には、何も話せないか?それ程に、頼りないか?」
何を言われているのか判らない。そもそもそれは、ニックの自身に対する言葉でもある。
大きく目を見開いて、ただ、首を横に振るニックの後頭部に手を差し入れて、マルストロムは彼を深く間近に覗き込む。
再び、なぞられる唇。目の前で翻る、苦い微笑。
「唇にも残るものなんだよ、口付けの跡というのはね…」
その台詞の意味を理解するより前に、ニックの発するべき言葉はマルストロムの口中に消えた。



それは、今までのものとはまるで違っていた。ニックをこじ開け、探り、貪り尽くすが如き口づけは、より深さを増していく。嚥下しきれない互いの唾液は混ざり合って、口の端で糸を引いた。
親愛も、優しさも一片も存在しない。それは、強奪である。ようやっと、その精神的拷問から解放された時には、既にニックの顎は固く強張っていた。
「……何故…?」
答えはない。注がれる視線にも、何の色もなかった。ただ、無表情に彼はニックの士官服の襟を開いていく。そのゆっくりと丁寧な様子は普段の彼と全く変わらず、それ故にこそニックは、混乱と恐怖に更に躯を硬直させた。
首筋から鎖骨にかけて、痛い程にきつく吸われた後をねっとりとした舌が絡み、追い掛ける。既に躯は、ガタガタと音を立てる程に震えていた。拒絶の訴えは幾度も喉を迫り上っては、形になる前に凍りつき、胸の奥に貼り付いた。それらこそが、彼を窒息させるのか。
もの言いたげに開かれた震える唇は小さく動きはしたが、思うように息を吸う事ができない。意識は徐々に白濁していくのに、躯を這う手と唇の動きははっきりと感じ取れて、それが全ては現実であると告げている。
何故?!
恐ろしい。苦しい。厭わしい。そして、何よりも悲しい。これで何か、大切なものが壊れてしまったのだという直感が、ニックの意識を鷲掴みにした。
こめかみを伝い落ちる冷たい感触は、きっと涙だろう。少しぼやけた視界に、マルストロムの顔が映る。彼の下に押さえ込まれて涙を流している、という状況を恥ずかしいとも屈辱であるとも、不思議と思わなかった。マルストロム自身も、まるでニックと同じ事を感じているかのような、そんな表情を見せていたせいかもしれない。
「すまなかった…」
体に掛かっていた重みが静かに去っていく。それからほんの少しの時間をおいて、己の体が勝手に上身を起こしている事が、ニックには信じられない。半分凍り付いてしまったような、痺れた脳の片隅で、もう決して立ち上がったりなどできないだろうと感じていたというのに、人間は自身で思うよりもずっと逞しいという事だろうか。
ああ、それなのに、何でこんなに手が震えるのか。ボタン一つ満足に掛けられやしない。
「…自分が、こんなにも独占欲が強いなんて、知らなかったよ…」
苦い自嘲を洩らす彼に、一体何を言えただろう。
「頼むから、一人にしてくれ」
そして、そのまま退出する事以外の、一体何が?



無事、居住区に辿り着けたのは、奇跡だった。少なくとも、ニックにとっては。
それでも、表向きはしっかりとして見えていたと思う。己の感情というものを隠しおおす事は、彼の持ち得る中では最も際立った軍人としての素質だった。
しかし、彼が入室した瞬間、アレクセイは驚いたように腰を浮かせて、こう言った。
「どうかしたんですか?ミスタ…」
「…何がだ?」
「……このような言い方を許していただけるのでしたら、ミスタ・シーフォート。まるで、死人のような顔色です」
そう言われてみれば、指先も白く冷たくなっているように思える。成る程、これに類するような顔であるというのならば、確かに死者のようであるだろう。
そして、それはある意味に於いて正しい。
ニックは、己の心の中の何かが確実に死に絶えてしまったのを感じ取っていたのだから。
「まだ、消灯までには少し、時間がある」
無表情なその言葉に、アレクセイが顔を上げる。
「罰点を消化すべきだとは思わないか」
アレクセイの動きが止まった。彼は、ニックの顔をただ見つめている。その表情から、彼の真意が探れないものかと、期待して。
だけど恐らく、それは無駄な行為だ。ニックは、アレクセイの顔を見つめ返した。
数瞬の沈黙。
アレクセイは、薄く寂しそうな微笑を洩らす。ニックの表情から、彼の心中が窺えない事に落胆してか、それとも、ニック自身にも見遙かせない、その心の闇の存在に気づいてか。
「アレクセイ・タマロフ士官候補生。罰点消化のため、体育室での訓練に励む旨、許可願います、サー」
「許可する」
アレクセイの無言の示唆に、サンディが口ごもりつつ、復唱する。それにも許可を与えると、彼等二人は背筋をピンと張った、いかにも軍人らしい歩調で、ニックの横をすり抜ける。
「…すまない」
すれ違い越しに呟いたニックに、アレクセイは慰撫のこもった微笑を浮かべた。部屋を出る際の、一分の隙もない敬礼にはその親密さは窺えなかったが、ニックには彼の暖かな心遣いが確かに感じられた。
アレクセイに続いて、サンディが出ていく。アレクセイとは対照的に、彼の目には打ち消しきれない戸惑いと怯えの色がある。それでも今は、何も言えない。言う気もない。そもそも、言い訳などしてはならないのだ、最先任士官候補生は。
自嘲混じりの思考。それでも、後一人、この部屋に残っている。誰よりも、今顔を合わせたくない人物が。
「ヴァクス。聞こえなかったのか」
「…それは、最先任としての命令ですか?ミスタ・シーフォート」
「俺の言葉は、全てそうだ。判っているはずだろう」
震えそうな声を努めて抑えたニックの言をどう思ったのか、ヴァクスは肩を竦め、侮蔑に満ちた冷笑を浮かべて見せた。
「マルストロム宙尉とうまくいかなかった、ってところですか。しかし、そんな事で我々が八つ当たりをされるのは、心外です」
瞬間、目の前が真っ赤になった。その時、手に触った物を彼に向かって、投げつける。それは、腕を交差させて頭部を守った彼の耳元近くで壁に当たって、派手な音を立てて床に落ちた。落下物の残骸から、それが自分の目覚まし時計であった事に気づく。意識の一部では、明日の朝はどうしよう、と妙に冷静に状況を見通している。しかし、その大部分は、目の前の存在に対する怒りに我を忘れていた。
「お前のせいだ!お前があんな事をするから…っ!」
こんな事は言うべきではないと判っていた。ヴァクスの嫌がらせに端を発したのは疑いようもない事だったが、だけどそれはきっかけにしか過ぎなくて、結局のところ、自身がずっと目を背けていた事が白日の下に曝されてしまった、というだけなのだから。それでも、止められなかった。
マルストロムが何を求めているのか、多分よく分かっていた。
そういう対象として見られた事が、今までなかった訳ではない。士官学校に入学する以前も、そして、入学してからは特に。しかし、その視線はニックに不快感しか与えた事はなかったし、己にそのようなことを要求する輩になど、軽蔑を以てその返答としてきた。
しかし、マルストロムが自分にそれを求めるのならば、応じない訳にはいかない。何よりも彼は宙尉であって、士官候補生である自分の先任に当たる。先任士官の命令は絶対だ。だけど、ニックは彼を嫌いたくなかった。軽蔑などしたくはなかった。そうして自分の中から閉め出してしまうには、彼の事が好きであり過ぎていた。
そんなものと引き替えにして彼との友情を失うなど、とんでもない事だ。…きっと、マルストロムも同じように思っているのだろう。そう思っていた。事実、今まで彼がニックに対して、それを命じた事などなかった。
だから、ニックは何も気づかない振りをしていた。ずっと。
マルストロムの手の熱さ。唇の優しさ。時折閃くように瞳を掠める、苦しげな色。彼を胸苦しくさせるそんなもの達と、そして何より、決してそれを厭うてはいない、そんな己の不可解な想いにも。
決して、気づきたくなど、なかったのに。
ニックは、ヴァクスの顔を見ることができなかった。そもそも、顔など上げられない。決して、見せられない。涙腺が壊れてしまったような現在の状態では、さぞや情けない顔になっているだろうから。
その時、落ちかかる前髪を撫で上げる手の存在を感じた。ぎくりとして、一瞬、身を固く強張らせたが、彼の手は所在なげにニックの髪を指先で梳いているだけだ。まるで、慰めているように。あるいは、親が子を愛撫するように。
何を考えて、ヴァクスがそんな事をしたのか、分からない。己は、そんなにも子供のようだっただろうか。
それは、そうかも知れない。彼もさぞかし困惑した事だろう。自分よりも上位者であるはずの最先任士官候補生ともあろう者が、彼の前で、涙を止める事もできないなんて。
ヴァクスは、ニックの後頭部に手を移すと、己の胸元に引き寄せた。額に、少しざらついた軍服の感触が当たる。そうしていると、額がじんわりと暖かくなってくる。
ヴァクスの体温だ。
ああ、何故それだけで、こんなにも涙があふれ出る。
シーツは、止めどなく落ちる水滴を吸い続ける。



END



歌っちゃえ~。ららららら~♪
踊っちゃえ~。えいっえいっ。<踊ってる
ええ、そんなカンジです。
そして、恥ずかしい過去ってカンジでもある。








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