日本比較教育学会 編 『比較教育学研究』第28号(2002年) 所収
出光 直樹(桜美林大学)
本書は、両国の教育について現時点で最も包括的に記した邦語の概説書である。オセアニア教育学会(笹森健会長:1990年にオーストラリア教育研究会として発足)のメンバーにより執筆された本書は、我が国に於けるオセアニア教育研究の成果を反映したものであるとともに、研究者のみならず、修学旅行や留学先として脚光を浴びているこの地域を訪れる中高生・大学生や、その引率・指導に当たる先生などの関係者に広く読まれることを期待しており、平易な文章により執筆されている。 編者を含めて16名の執筆者により記された本書は、両国の文化的土壌を概説した序章に続き、オーストラリアの教育についての第1部、ニュージーランドの教育についての第2部、教育現場の実態について第3部、および両国の学校系統図・教育年表から構成されている。 第1部と第2部はそれぞれに、(1)国の概観、(2)1980年代以降の教育改革の動向、(3)初等・中等教育制度、(4)高等教育制度、(5)教育行政制度、(6)遠隔教育、先住民教育、多文化教育、言語教育、継続教育、就学前教育などの特色ある教育、についての各章で構成されている。歴史的背景を踏まえつつ現代に焦点を当てて、両国教育の全体像がバランス良く描かれている。 第3部は、オーストラリアの中等学校、大学、教育行政の職に従事している3人の邦人執筆者による現状報告を収録しており、日本人の目から見た具体的な教育現場の雰囲気を窺うことが出来る。 (A5判、247頁、2,800円+税、東信堂、2001年) |