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 大学教育学会 第23回大会 (2001年6月9日〜10日:桃山学院大学)

自由研究発表報告 (6月9日11:20-11:40)

「障害者福祉ゼミとインターネット − 広がる当事者へのアプローチの可能性と課題」


障害者福祉ゼミとインターネット
広がる当事者へのアプローチの可能性と課題

出光 直樹
(桜美林大学)

 本報告は、桜美林大学経営政策学部2000年度専攻科目「自主ゼミ:当事者から学ぶ障害者福祉」(通年4単位、3年生以上対象の選択科目)での、インターネットを活用した実践の報告である。

 このゼミは、16名の3年生(当初は4年生3名、3年生17名)、科目担当者の阪上裕子(経営政策学部教授)、および実験的授業運営の為に参加した出光直樹(大学教育研究所研究員)によって構成された。

 1997年設置の経営政策学部にて、阪上は1999年度より「当事者から学ぶ障害者福祉」をテーマとしたゼミを開講しており、1999年度のゼミでは、阪上が研究活動等を通じて関係を持っている障害者やその家族、施設等を訪問したゼミ活動を行った。

 2000年度のゼミでは、自身が障害児の父でもある出光が協力者として加わり、当事者から学ぶ手段としてインターネットの活用を試みた。具体的には、多くの障害者やその家族が、自らの障害や生活等を記しているWebサイトを開設している事に着目し、その学習をゼミの柱として、電子メールによるサイト開設者へのコンタクトを経て、直接会って取材することを目標とした。

 受講者の多くは、1年次に全学必修の情報処理科目を履修はしたものの、インターネットの利用頻度は高くなかった。

【開講時のアンケート:(20名分)】

  ほぼ毎日 ときどき ほとんど使っていない
E-mail 3 11 6
Web閲覧 1 9 10

 まずは開講早々に実技の講習行い、障害者やその家族が開設しているサイトを紹介するとともに、検索サイトを利用してのサイトの検索方法を演習した。ディレクトリー型の代表的な検索サイトである Yahoo Japanでは、カテゴリー(分類)に「障害者」が設けられていることもあり、キーワード検索でも[障害 個人][障害 家族][障害 日記][障害 持つ]などの組み合わせを用いることにより、容易に検索することが可能であった。

 続いて検索したサイトについての報告を数回ほど個々人で行わせ、関心が固まってきたところで、内容の近い者同士を集めてグループを構成した。グループを作ってからは電子メールでコンタクトを取るサイトをいくつか選ばせ、グループ単位で電子メールを送らせた。その際には、文面をグループやゼミ全体で検討させた。各グループで数箇所ずつ電子メールを送ったところ、殆どのサイト開設者より好意ある返信があった。その後のやりとりを続ける中で、各グループとも直接にサイト開設者を訪問する了解を取り付け、無事に取材する事が出来た。

【グループのテーマ(メンバー数)、活動内容】

障害者
スポーツ
(2人)
【Web & Mail調査】電動車椅子サッカーについての競技者個人や協会などのサイト。
【訪問取材】電動車椅子サッカーの試合に、運営ボランティアとして参加。
障害児
学童保育(2人)
【Web & Mail調査】障害児を受け入れている学童保育、障害児の家族の自主活動グループ、作業所などのサイト。
【訪問取材】不登校児や障害児を受け入れて、共に活動をしている施設を訪問。
障害者(児)と
その家族
(3人)
【Web & Mail調査】障害児(者)の家族、福祉施設のサイトなど。
【訪問取材】精神障害者の家族会の会合に参加。
趣味を
通じての
リハビリ
(4人)
【Web & Mail調査】障害を持った当事者が開設するWebサイトの中でも、絵画や造形創作、文芸、スポーツ、旅行記等の趣味に関する内容が充実したサイト。
【訪問取材】事故によって、左膝の上からの切断と離断・右足関節の著しい障害を追った後、肥満解消のために水泳を始めて競技レベルで活動している男性(30代)を訪問。
自閉症児と
その家族
(5人)
【Web & Mail調査】自閉症児(者)の家族のサイト、自閉症協会、福祉施設等のサイトなど。
【訪問取材】自閉症の男子双生児の家族を訪問、ボランティアとして外出等に同行。

詳細は、当日配布の資料および http://www2.obirin.ac.jp/~idemitsu/ を参照

(大学教育学会 第23回大会 自由研究発表 於:桃山学院大学 2001年6月9日)