「障害者福祉ゼミとインターネット − 広がる当事者へのアプローチの可能性と課題」
当日のパワーポイントファイル(382KB)
出光 直樹
(桜美林大学)
本報告は、桜美林大学経営政策学部2000年度専攻科目「自主ゼミ:当事者から学ぶ障害者福祉」(通年4単位、3年生以上対象の選択科目)での、インターネットを活用した実践の報告である。
このゼミは、16名の3年生(当初は4年生3名、3年生17名)、科目担当者の阪上裕子(経営政策学部教授)、および実験的授業運営の為に参加した出光直樹(大学教育研究所研究員)によって構成された。
1997年設置の経営政策学部にて、阪上は1999年度より「当事者から学ぶ障害者福祉」をテーマとしたゼミを開講しており、1999年度のゼミでは、阪上が研究活動等を通じて関係を持っている障害者やその家族、施設等を訪問したゼミ活動を行った。
2000年度のゼミでは、自身が障害児の父でもある出光が協力者として加わり、当事者から学ぶ手段としてインターネットの活用を試みた。具体的には、多くの障害者やその家族が、自らの障害や生活等を記しているWebサイトを開設している事に着目し、その学習をゼミの柱として、電子メールによるサイト開設者へのコンタクトを経て、直接会って取材することを目標とした。
受講者の多くは、1年次に全学必修の情報処理科目を履修はしたものの、インターネットの利用頻度は高くなかった。
【開講時のアンケート:(20名分)】
ほぼ毎日 | ときどき | ほとんど使っていない | |
3 | 11 | 6 | |
Web閲覧 | 1 | 9 | 10 |
まずは開講早々に実技の講習行い、障害者やその家族が開設しているサイトを紹介するとともに、検索サイトを利用してのサイトの検索方法を演習した。ディレクトリー型の代表的な検索サイトである Yahoo Japanでは、カテゴリー(分類)に「障害者」が設けられていることもあり、キーワード検索でも[障害 個人][障害 家族][障害 日記][障害 持つ]などの組み合わせを用いることにより、容易に検索することが可能であった。
続いて検索したサイトについての報告を数回ほど個々人で行わせ、関心が固まってきたところで、内容の近い者同士を集めてグループを構成した。グループを作ってからは電子メールでコンタクトを取るサイトをいくつか選ばせ、グループ単位で電子メールを送らせた。その際には、文面をグループやゼミ全体で検討させた。各グループで数箇所ずつ電子メールを送ったところ、殆どのサイト開設者より好意ある返信があった。その後のやりとりを続ける中で、各グループとも直接にサイト開設者を訪問する了解を取り付け、無事に取材する事が出来た。
【グループのテーマ(メンバー数)、活動内容】
障害者 スポーツ (2人) |
【Web & Mail調査】電動車椅子サッカーについての競技者個人や協会などのサイト。 【訪問取材】電動車椅子サッカーの試合に、運営ボランティアとして参加。 |
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障害児 学童保育(2人) |
【Web & Mail調査】障害児を受け入れている学童保育、障害児の家族の自主活動グループ、作業所などのサイト。 【訪問取材】不登校児や障害児を受け入れて、共に活動をしている施設を訪問。 |
障害者(児)と その家族 (3人) |
【Web & Mail調査】障害児(者)の家族、福祉施設のサイトなど。 【訪問取材】精神障害者の家族会の会合に参加。 |
趣味を 通じての リハビリ (4人) |
【Web & Mail調査】障害を持った当事者が開設するWebサイトの中でも、絵画や造形創作、文芸、スポーツ、旅行記等の趣味に関する内容が充実したサイト。 【訪問取材】事故によって、左膝の上からの切断と離断・右足関節の著しい障害を追った後、肥満解消のために水泳を始めて競技レベルで活動している男性(30代)を訪問。 |
自閉症児と その家族 (5人) |
【Web & Mail調査】自閉症児(者)の家族のサイト、自閉症協会、福祉施設等のサイトなど。 【訪問取材】自閉症の男子双生児の家族を訪問、ボランティアとして外出等に同行。 |
詳細は、当日配布の資料および http://www2.obirin.ac.jp/~idemitsu/ を参照
(大学教育学会 第23回大会 自由研究発表 於:桃山学院大学 2001年6月9日)